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獄(ひとや)に咲く花 (2009)

監督
石原興
  • みたいムービー 19
  • みたログ 80

3.68 / 評価:34件

恋心が募るほど美しく

  • 花じゃないリリィ さん
  • 2010年6月26日 17時56分
  • 閲覧数 361
  • 役立ち度 20
    • 総合評価
    • ★★★★★

今年は吉田松陰の生誕180周年らしい
でも吉田松陰について、実はよく知らない
「松下村塾」の主宰者
幕府の閉鎖的な体制に意を唱えた思想家
安政の大獄で斬首の刑に処された
ざっとそのくらいの知識はあるが、彼よりむしろ弟子の方が世に名高い
明治維新に活躍した伊藤博文や高杉晋作など層々たるメンバーがいる
そのことからも彼の指導が倒幕に一役買っていたのはまず間違えなさそうだ

私は偉人好きの似非歴史ファンだが、幕末時代で胸がきゅんとなるのは新撰組の三文字・・・
こまかく勉強し直す気にはなれず
“獄中ただ一度”という恋愛方面に心引かれていたので、まあ支障はないだろうと止めました
そして鑑賞後、私の吉田松陰に対する知識は増えたかと言えば
上記に、志し半ばで終止符を打った30歳の生涯だったということが足されたくらい
でもその成し遂げんとした理想が無念に終わった短い人生、それ以上に感情が揺さぶられる事実はないだろうと思うので、この映画は私には充分に応えてくれた秀作でした

主役は松陰(作中は寅次郎)ではなく、高須久
この近衛はなさん、映画初主演みたいですが、なんとも一途でいじましい久を情感豊かに演じていらっしゃいました
調べると松方弘樹の孫で、両親共に芸能一家らしく、なるほど大物の匂いがぷんぷんしました

映画の主な舞台は、野山獄
房には鍵がかけられてなく、出入りは自由で食事も与えられるが、外界からは閉ざされている
同じ罪を犯した仲間がもっと条件の悪い牢獄に入れられたのを寅次郎はオカシイと反発しているシーンがあるので、百姓よりは身分の高い者が囚われているのでしょう

未亡人の久はほぼ無実の罪でここに入れられているが、親類からの厄介払いに等しく、他に居場所も寄る辺もない
獄中にいる者はみな似たような境遇で、食っては寝るだけの毎日に鬱屈としているものの、誰にも必要とされない身をひっそりと諦めている
学が高く、強い信念を掲げて生きている寅次郎の出現は、彼らに吹いた一陣の風になった
寅次郎は罪人である彼らに存在する意義を教え、希望を見出させる

最初、唾が飛びそうなほど新しい時代を饒舌に語り、かと思えば何も成せない自分の無力さに夜泣する寅次郎に、なんて熱血ぶり・・・苦手だなと感じてしまった
演じる前田倫良さんは、表情の作り方が大きいのでなおさら
けれど久に感情移入していくと、寅次郎がただの説教臭い人物には思えなくなるから不思議なのです
純粋だからこそ、世間にある曲がった道が一切許せなく、正したいと理想を声高に訴えるのだろう
融通がきかない、頭でっかちな・・・でも誰より真っ直ぐで清廉潔白に生きようとしている
久を通して見ると、寅次郎は次第に魅力的で愛おしい人物になってくるんです

久は世捨て人のごとく、髪はぼさぼさ、化粧っけのない顔はくすんでいて、身なりには無頓着でした
それがどうでしょう、物語が進んで彼女が恋心を募らせていく様子が切ないくらい観ている私も感じ入る頃には、眉を描き、紅をひき、着物で身を飾り・・・
女は恋すると美しくなると言いますが、そうではありません
好きな人の目に映る自分が少しでも美しくあるように、努力するんです
久も少しでも身奇麗にした姿で、寅次郎と接したかった
それも特別何かを望んでいたわけじゃなく、ただそばにいられればそれでいい
まさにいじましい女心を我がことのように体感してしまい、思わず私の目から涙が一雫・・・

目頭が熱くなることは多々あれど、めったに泣かない私
2010年初泣きの映画となりました

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 勇敢
  • 知的
  • 切ない
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