レビュー一覧に戻る
王女メディア
上映中

王女メディア

MEDEA

112

bakeneko

5.0

ネタバレ悲劇の核となったのは

パゾリーニがケルビーニのオペラ:『メディア(Medea)』に関わったことが縁で伝説のディーバ:マリア・カラスが唯一主演した映画で、歌声を聴かせなくても神懸かり的なオーラで伝説の女性を体現している傑作であります。徹底して寡黙&リアリズム重視の語り口が特徴で、ストレートで力強い演出で有名なギリシャ悲劇を素直に映像化することで、物語の核となる“人間の情念”について明晰で突き放した視点を投げかけて来ます。 え~、“パゾリーニ入門編としては何が良いの?”と訊かれて、「ソドムの市」と答えると100%友達を無くします。 で、(猥雑&残酷描写が無くて小学生も観る事の出来る映画としては)何が最適か?と言えば、聖書(マタイ伝)を素直に映画化した「奇跡の丘」か、ギリシャ悲劇を素直に映像化した本作で、特に基督教徒ではない日本人には、“ドラマチックな物語の集約度”と“人間性への鋭利な切り込み”で本作の方が(宗教的感覚が共感度を高める)「奇跡の丘」よりも取っ付き易いといえます。 エウリピデス原作によるシンプルで強烈な物語を、原色を生かした色彩美と逆光を取り入れた鋭角的なカメラワークで見せる作品で、鮮烈な色と非日常的な視点からの映像が観客に不安定な覚醒感をもたらします。そして同時に、様々な民族音楽(イラン・日本・チベット・アフリカ・ブルガリア・インド)とのコラボレーションが不思議な調和感覚を体験させるのであります(日本音楽からは「八重衣」、「熊野」、地唄の「雪」などが使われています♡)。そして、その中で華燭無く描かれる悲劇の叫びに、“痛切な想い”と並行して“情念の帰結を納得する感慨”が身を包むのであります。 同じくギリシャ悲劇を元にしながらも新解釈を輝かせていた「アポロンの地獄」と異なり、時代が一気に現代に飛躍する様な前衛的な解釈は挟まれていませんので、安心して?世界で最も古い悲劇の一つを鑑賞できる作品であります(女子&お子様でも大丈夫?―多分)。 ねたばれ? 1、序盤、弟を犠牲にして恋人と逃げるシークエンスを観て、“姉ってこんな事を平気でするんだよね~”と多くの姉弟の弟はこぼします(もしかして一般的真理?)。 2、イアソンを演じるジュゼッペ・ジェンティーレはオリンピックの三段跳びの選手でした。明朗健康&身勝手鈍感を体現して見事な“普遍的男性像”を創り上げていますよね♡

閲覧数1,599