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隣の家の少女
2010年3月13日公開

隣の家の少女

THE GIRL NEXT DOOR

912010年3月13日公開

daisy

3.0

ネタバレおぞましき自己

以前小説「隣の家の少女」を読んで、過呼吸になり意識が朦朧となった。 「切り裂きジャック」に興味を持ってから、猟奇殺人関係の本を読み続けて早20年、(別にそういう本しか読んでないわけではない、念のため)「隣の家の少女」の元ネタ「インディアナ少女虐待事件」はそれらの本の中で読んだことがあった。 それをしっかり記憶していた私が、躊躇しつつもこの本を手に取ったのは当然のなりゆきであり、だからこの映画を見に行ったのも、当然のなりゆきだった。 映画版では、小説のイメージからするとメグ役の女の子がイマイチである。 それに年をとりすぎてるような気がする。 メグは健康的かつ少女特有の幼い色香がある美少女であり、その魅力が嫉妬や怒り、欲望等をかきたて、虐待を苛烈にさせている面が小説にはあったような気がしたので、その点はやや残念。 それにデイヴィッドも、最初から一貫してただただずっと心痛めてメグを助けたいと思っているだけのように見えたのは、小説の印象からするとちょっと一元的であるような気がした。 というのも、小説では地下室での監禁が始まった頃のデイヴィッドは、縛り付けられたメグに心痛めつつも、背徳的な欲望と魅惑を感じていたフシがあったからだ。 基本的に善良である筈の少年の中の微かな狂気の臭いが、読み手に居心地の悪い気持ちにさせるところでもあったと思う。なぜならそれはこの物語を自ら手にとって読んでいる側も同じだからだ。 この本を読んだ時、その内容もさることながら、今まで自分でも気づいてはいたけれど意識的に避けて見ようとしてこなかった、自らの暗部と向かい合わざるおえないハメに陥った。 それは、 なぜ、私はこのような凄惨な事件の詳細や、絶望のどん底に突き落とすような小説を読みたいと思うのか? なぜ、私は本を読んでたびたび胃液を吐いたり、立ち読みしていた本屋で衝撃のあまり貧血で倒れたり(一回だけある)過呼吸になったりしながらもそれらを読み続け、嫌悪感と恐怖に苛まれながらも、その残酷さを「楽しんで」しまうのか。 読んでる最中、犯人に対する怒りで頭が爆発しそうになる時がある。実話だったら、涙を流しながら、犯人達に被害者と同じ苦しみを、その行為に相当した罰を与えてください、と本気で神に祈ったことすらある。 なのに、こう書くのは正直抵抗があるが、私はその凄惨な物語を「楽しんで」いるのは間違いない。そうでなければ、そのような本を何冊も読むわけがないのだ。 そして残酷な内容ほど夢中になって読む。 間違いなく残酷な展開を期待している。 そんな自分の姿を認めるのが嫌だった。 自分を駆り立てる異常な欲求の正体はなんなのか、という疑問は、そのままこの物語の主人公にも当てはまる。 自分が好きだった少女が凄惨な虐待を受けているところを、苦悩しながらも、どこか魅惑と欲望を感じつつ、同時に自己嫌悪感と恐怖を感じながらただ「見ている」だけのデイヴィッドと、同じく魅惑と嫌悪感と恐怖を同時に感じつつただ「読んでいる」自分がかぶってしまう。 嫌悪しつつ、苦しみつつこの凄惨な物語を読んで「楽しむ」自分(見て「楽しむ」デイヴィッド)とは一体なんなんだ? こういう謎とおぞましい自己の姿を「隣の家の少女」という小説は、読み手に突きつけてくる。 虐待やそこにおよぶ過程はそれなりに原作に忠実だが、映画ではこの「おぞましき自己」への恐怖と嫌悪がない。 中年になってもその出来事を忘れていないデイヴィッドの苦悩は、助けることができなかったがゆえの痛みのみである。 メグの言った「気持ちが大切」で若干だが救われてしまう。 それに原作のラストとは違い、映画ではあっさり終わりすぎなのは非常に残念。 煙に気づき降りてきた兄弟とデイヴィッドの、もう後戻りの出来ない極限の状況は、元は仲の良い友人同士だった彼らの関係が当然だがこのひと夏ですっかり変わってしまったことを強烈な形で示していて、印象的だったのだ。 さらに原作と同じようにデイヴィッドがルースを殺してほしかった。 中途半端な救いではなく、殺人という罪も背負って、失われた少年時代へのさらに深い苦悩を表現して欲しかったというのが正直なところ。 ただ、原作を読んでいない観客にとってはたいした問題ではないかもしれない。 怖いもの見たさでこの映画を見にきたであろう観客(私もだが)の期待には答えてくれる映画だとは思う。 ただ、映画的に面白いかと言えば・・・微妙です。 それにしても映画館、混んでた。 パンフも売れまくってたし、終映後熱心にチラシを何枚も持ってゆく人を見かけた・・・お手軽な映画ではなく、こんな内容なのに、この盛況ぶり。 つい「おぞましき自己」を他人にも見てしまうのであった。 (私が言うのはヘンなのは百も承知)

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