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スナイパー:
2010年4月17日公開

スナイパー:

THE SNIPER

862010年4月17日公開

xi_********

2.0

迫力の銃撃戦とドラマのない物語

本作は、香港映画有数の特殊部隊マニアと言われるダンテ・ラムによるアクション映画です。香港映画には銃撃戦描写を得意とする人が多いですが、ダンテ・ラムの特徴は重火器に拘りを見せること。それはこの映画からも十分に感じ取れると思います。 08年の『証人』(日本未公開)、10年の『綫人』(邦題『密告・者』)はアクションを抑えた濃密な人間ドラマでしたが、その合間(09年)に撮られた本作はダンテ・ラム本来の・・・と言うか、彼が得意とする銃撃アクションが存分に描かれています。『スナイパー:』の邦題からも想像出来る通り、ベースは特殊部隊所属の狙撃手たち(リッチー・レン、黄暁明、エディソン・チャン)のプライドと意地が激突するお話ですが、その見所はあくまでアクション(銃撃戦)に絞られた映画と考えていいでしょう。 ストーリーを紹介します。 盗難車を探す二人組の警官は、偶然ある犯罪現場に遭遇。OJ(エディソン・チャン)は応援を要請するが、相棒の失態により危機に陥る。そこへ現場に展開していた特殊部隊のフォン隊長(リッチー・レン)が突入し、ふたりを救う。OJの対応に狙撃手としての才能を見い出した隊長は、彼をリクルート。その指導の下、めきめきと頭角を現していくOJだったが、先輩のシェーン(ボウイー・ラム)から、かつて隊長のライバルであった伝説の狙撃手リン・ジン(黄暁明)の存在を聞かされる・・・。 繰り返し述べますが、本作の目玉は銃撃アクションです。 クライマックスは当然として、途中何度か描かれる銃撃戦の迫力はどれも素晴らしく、そこらのハリウッド映画と比較しても劣るものではないでしょう。最も、リアリティよりも迫力を追求するダンテ・ラムの銃撃戦は好き嫌いがわかれる可能性もありますが(個人的にはライフルで撃ち合いってのは感心しない)。 一方、ドラマはお粗末の一言。 これは演出と言うよりも脚本の問題でしょう。ジャック・ンはダンテ・ラムと長年(もう10年以上)組んでるベテランで、上記の『証人』や『綫人』もこの人の本なんですが、今回はハズレ(苦笑)単純に物語の焦点がボヤケ過ぎです。 何も知らずにこの映画を観た人は(私もそうでしたが)、100人中100人がOJの物語(つまり成長ストーリー)だと思うはずです。冒頭のエピソード以降の10分ほどは完全に彼が主人公。しかもテイストは青春映画。それがリン・ジンが登場するや、突然映画の方向性とトーンが変わってくる。それまでほとんど存在感のなかったシェーンが鍵を握るような雰囲気を漂わせたり、隊長の私生活が意味深に描かれたり、随分唐突な転調を迎えます。これが連綿と繋がってるならドラマにもなりますけど、そこで描かれるほとんどが本筋に絡むこともないんですから。 結果、主人公然としていたOJは物語の重心からフェードアウトすることになり、代わりにリン・ジンが鎮座することに。本来ならこれに比例してフォン隊長も存在感を求められるはずなのに、彼は終始リン・ジンに振り回されるだけの役回り。 書き込みが足りないのはキャラクターも同じで、リッチー・レン、黄暁明(ホアン・シャオミン)、エディソン・チャンの誰一人として役柄に説得力を与えられていません(誰が演っても同じですが)。まあ、唯一ボウイー・ラムだけが渋い存在感を見せてますが(これは贔屓目です)。 個人的に思うこの映画の欠点は、制作サイドが何を描きたいのかが伝わらないこと。 別に映画にメッセージが必要だなんて思いませんが、この映画は単純に物語がまとまっていない。描きたかったのはOJの成長なのか、隊長のジレンマなのか、リン・ジンの復讐心なのか。だったらアクションに徹すればいいのに、妙に格好つけてエピソードを羅列してるんだから始末が悪い。一番不愉快だったのは、ラストで思い出したみたいにOJの成長物語として着地させたこと。安っぽい青春映画にもなってません(苦笑) 本来のダンテ・ラムは銃撃アクションとドラマチックな物語を両立させることの出来る、いわゆる職人肌なんですけどね。さすがにこれはおススメ出来ません。 やっぱりどんな監督でも脚本が破綻してると限界がある・・・と言うことですね。

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