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孤高のメス (2010)

監督
成島出
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4.13 / 評価:1173件

医者・仁者・聖職者

  • ガーディアン さん
  • 2010年3月27日 12時39分
  • 閲覧数 1414
  • 役立ち度 140
    • 総合評価
    • ★★★★★

これは観てよかった。
主人公の医師の、信念を貫き、かつ人間的な職業的姿勢に、襟を正したくなった。
試写会を思い出してレビューを書いている今も、胸が熱くなる。

個人的には、同じ成島監督の脚本と堤真一の主演による
「クライマーズ・ハイ」より、こちらのほうが心に残った。
堤もいいが、夏川結衣と余貴美子、二人の実力派女優の演技も絶賛ものだろう。
本作のテーマである「脳死臓器移植」には私は原則として不賛成だが
その点は切り離して鑑賞をお勧めしたい、熱くて厳粛でヒューマンな医療ドラマである。
主観性やわざとらしい臭みを感じさせず、映像も、みずみずしい叙情性を湛えている。

1989年、田舎町の市民病院に当麻鉄彦(とうまてつひこ=堤真一)が着任した。
彼はアメリカ帰りの優秀な外科医だが、制約の多い日本の大学病院のあり方を嫌い
地域医療に身を捧げるため、この古びた病院にやってきたのだ。
卓越したオペの腕と、「患者のため」しか考えていないフランクな人間性に
周囲の医師やシングルマザーの看護師(夏川結衣)たちも尊敬と親しみを覚え
市民病院のよどんだ体質に風穴が空きはじめる。

そんな矢先、ある少年が事故で病院に運び込まれ、脳死状態になる。
少年の母親(余貴美子)は
「この子にできる最後の人助けなんです」と涙ながらに決意を込め
息子の肝臓を、肝硬変に倒れた市長に提供することを申し出る。
だが脳死臓器移植は日本では違法行為であり、執刀医は殺人罪に問われる可能性もある。
それでも当麻は、自分の職業生命を賭けて執刀するのか? 
他の医師や看護師、病院側も、患者のためにリスクを共にするのか?(以下ストーリー略)

映画の終盤、私はふと思った。
――当麻のように、目の前で苦しんでいる患者やその家族を助けるために
自分の職業生命を捨てる覚悟で手術に臨む医師が本当にいるとしたら
そんな人のことは、なんと称するべきだろうか――と。
プロの医師? 名医? いや、それだけでは言い尽くせない。

そのとき、「聖職者」という言葉が浮かんだ。
普通はこの言葉は、徳の高い宗教者にしか使わないだろうが
あなたや私は「それが自分の仕事であり、それをしなければ自分という存在の意味はない」
と思い定めて、クビや逮捕・有罪判決を覚悟で人助けをするなんて、現実にできるだろうか。
要するに、人助けのために自分を捨てることができるだろうか。
それに踏み切る当麻みたいな人間がいたら、聖職者に近いと言っていいのではないか。
聖職者が言いすぎだとしたら、古い言葉だけど「仁者」だと思う。
「医は仁術」という言葉の意味を教えてくれる一人の医師。

大げさでカッコつけた言い方と思われるかもしれないけれど
私はできることなら、当麻みたいな無私なる「仁者」に少しでも近づきたい。
そんなことを思わせ、人間性の尊さを信じさせてくれた映画です。
ぜひ、ご覧になってみてください。

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