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ウォール・ストリート
2011年2月4日公開

ウォール・ストリート

WALL STREET: MONEY NEVER SLEEPS

1332011年2月4日公開

far********

4.0

ネタバレ“金神家の一族”の血は続く・・・

『犬神家の一族』のような、家族や一族の血縁における怨念が深く絡み合う、逃れられない運命の恐ろしさ。エンディングにホラー映画以上に背に泡した。 前作は、バブル真っ只中の熱に浮かされた虚飾のニューヨークで成功を謳歌するギラつく主人公のゲッコーの生活や、ゲッコーが言う「俺は金を稼ぐためにやっているんじゃない。いかにゲームに勝つかを目的にやっている」という株の売買の世界は、まさにギャンブル依存症のドーパミン過剰分泌のように病的興奮を見るものにもたらした。 しかしバブルは弾け、9・11を経験したニューヨークの現代の若きトレーダーのジェイコブや、彼の婚約者でゲッコーの娘・ウィニーは、親の凋落と世界の崩壊を見てきていたためか、地道で内側に目を向けた世代ゆえ、地道で堅実な生活を維持する。ジェイコブはタバコもドラッグも女にも手を出さす、ウィニーに純潔を捧げる。前作と今作の対比が面白く、前作のぎらついた強欲な世界、パワーを求める人々には味気のないのだろう。 冒頭、このペースで過去の強欲さとやり直しを模索するゲッコーと娘の話で、まとまり大団円となるなら、この映画は作られることはないだろうと考えていた。そこからがストーンが、この映画の種明かしが始まる。すでにこの時点で映画の半分以上は経過していただろうが、ここから“悪魔”が目を覚ます。1億ドルを娘から奪いトンズラしたゲッコーは、ロンドンで株の会社を興し、瞬く間に娘の金を元手に株売買の業界に復帰する。 そこに現れたジェイコブは、すでに関係が壊れた婚約者のウィニーのおなかに、ゲッコーの“初孫”が宿っていることを語り、「あなたの孫のためにも1億ドルを彼女に帰してほしい」と申し出るが、ゲッコーは「お前みたいなガキに何の交渉もする気はねえ」とすごむ。そして孫への支援の願いも「そんな交渉に応じるわけはない」と一蹴する。 私の中で浮かんでくるのは自己主張の乏しい不安定だった恐ろしい父親の記憶しかないウィニーの“存在感のなさ”だ。異様にウィニーと父・ゲッコーの和解は早い。私はウィニーの姿に、家族も命も「マネーゲーム」というギャンブルのためならすべてを犠牲にできる、悪魔のような父親におびえつつ生きた、アダルトチルドレン(AC)の姿を見る。 ギャンブルやアルコールなどの依存症の親などを持ち、機能不全家族の中で育ったACの人々は、子ども時代から両親におびえ、家庭が円滑にまとまるよう努めてきたため、自己主張できず、常に人間環境に波風立たぬように緊張した状態でしか他者と付き合うことができない。その結果、自分が望まぬことを引き受け、要求され、疲弊して心身を崩し、一箇所に長く所属できないなどの問題を抱える。親の生き方が与えた影響を自覚なく引きずる影をマリガンは見事に、静かに体現していると感じられる。またACの人々に特徴的なのは、同じ家族の問題や息辛さを抱えるパートナーを進んで、また無意識に選ぶ傾向だ。あれほど、金以外のことは考えず、家族も捨てた父親を嫌いつつも、自分の子の父親であるジェイコブは、呪った父親と同業の野心家だ。血脈の負の連鎖を物語は描き続ける。  そして負の連鎖をラストが決定的に象徴する。別れたはずのジェイコブが、おなかの大きいウィニーを訪れ、やり直したい、さびしいと、語る。するとウィニーは「私もさびしいし、やりなおしたい・・・でも・・・」と簡単に揺らめきはじめてしまう。そこに現れるゲッコー。普通なら、金を奪ってトンズラし孫の支援も蹴った、“殺されても止む無し”的なゲッコーは平然と語るのだ。「寛大さと冷酷さ。今回は寛大さにかけてみたいと思う」とし、ジェイコブの推す新たなエネルギー開発企業に1億ドルの投資をしたと話すのだ。そして「私もやり直したい。お前らはお似合いだ」といって姿を消す。それに背中を押されるようにキスを重ね、再出発を誓う。しかし二人の表情には安らぎも、幸福も、笑顔もない・・・。その後息子であり、初孫の1歳の誕生日に集う家族や友人のパーティー。そこにはゲッコーもいる。高級マンションの屋上のような場所で繰り広げられる宴こそ、新たなゲッコーのマネーゲーム、投資の始まりであることが陽気な雰囲気に映し出される-。 結局、血は断ち切れない。どんなに汚い、違法な手段でものし上らなければいけない強迫観念に満ちた人々は肩を寄せ合い、更なる強迫的な一族を築いていく。不幸が新たな強烈な不幸を導き、結局、金に人々は屈服していく現実。犬神家、ならぬ金神家の一族。その物語のビギニングといえる同作。最終的には誰も共感できる人々はラストシーンにはいない。現代には、家族さえも血縁さえも、金の前にはすべてがかき消されしまった。家族のために金を捨てる時代は終わった。“金は決して眠らず”“血は続いていく”のだ。

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