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エルム街の悪夢
2010年6月26日公開

エルム街の悪夢

A NIGHTMARE ON ELM STREET

R15+952010年6月26日公開

mas********

4.0

より残忍に、より狡猾に!

以前「ジェイソン」祭りをやった時にも書きましたが、実は私はフレディよりジェイソン派です。だからかも知れませんが、ジェイソンの13本(ドキュメンタリーを含む)をレビューした時は、とてもスムーズに筆が運べました。ところが「エルム街」は実は何気に苦労しています。そしてやっと今日、最新作のこのリメイク版まで辿り着きました。 今日のお題目は「エルム街の悪夢(2010年版)」です。 マイケル・ベイのホラーリメイク祭り、レザー・フェイス、ジェイソンに引き続き、最後の大物を復活させました。ベイ自身がホラー・ヒーローたちに愛着を持っているのはわかります。しかし流石にこう立て続けにリメイク作を乱立させたら、どうしたって金儲けのためだけに感じられてしまう。正直「エルム街の悪夢」のリメイクの話を聞いた時、ああ、またかよ!って思ったものでした。 このリメイク版で一番の話題は、新生フレディの登場です。名作のリメイクということで、フレディ役をロバート・イングランドから変更することは最低限やらなくてはならないこと。もしイングランドの続投ということになれば、それはリメイクではなく、久し振りの続編というイメージを拭い去れないからです。 そして選ばれたのがジャッキー・アール・ヘイリー。「がんばれ!ベアーズ」の悪ガキも今は立派に中年、近年の「ウォッチメン」のロールシャッハ役は本当にシビレました。もうこちらの五感を震わすようなあの演技の凄さ!ちょっとすれた善人役から悪役、そしておとぼけ役までこなす名優の一人です。彼があのフレディ・クルーガーを演じる!実はもうそれだけで是非これは観なくてはと思っていました。 新たなフレディ像が受け入れられたかどうかはさておいて、本作は旧作シリーズのように恐怖と笑いをブレンドしたような作風にはしておりません。この点イングランドのフレディとは明らかに違う。ただ、ジャッキーはあくまでイングランドのフレディを否定してはいません。それどころかオリジナルのフレディに尊敬の念を抱いている。とぼけてお茶目なフレディは本作に中には存在しませんが、通路に仁王立ちする姿、トレードマークのツメの扱い方、完全にイングランドのフレディを意識しています。 話としては完全に1作目の焼き直しです。ただ主役のナンシーが人付き合いの下手な内向的な少女になっていたり、フレディが幼稚園の管理人だったり、若干の設定の違いはあります。しかしこのシリーズのファン、特に1作目のファンとしたらもう歓喜の連続と言えるシーンの目白押し。クリスの空中浮遊の惨殺シーン、犯人として捕えられたボーイフレンドの牢内での不可思議な死、そして有名な壁が膨らむシーン。死体袋に入れられたクリスの幻影や、伝説的なバスタブのシーンもきっちりと再現されていてもう嬉しいことこの上ありません。 更にただ単に夢と現実のあやふやさに留まらず、マイクロナップという概念も盛り込む。これは70時間以上の不眠状態を続けると起こる現象で、起きていながら夢を見るというもの。実はこれってフレディからの逃げ場が完全になくなるという意味なのですよね。 21世紀に入って、当然80年代の技術より進歩し、そのVFXには目を瞠ります。特にフレディのメイクはガラッとその印象を変えてしまいました。レザー・フェイス、マイケル、ジェイソン、既に復活したホラーヒーローたちとフレディの違いは言うまでもなく、マスクの有無です。ジェイソンら3人はいずれも普段素顔を晒していません。だから彼らが復活して大暴れしても、それぞれトレードマークのマスクの印象に邪魔されて、正直彼ら自身に目新しさは感じられない。 ところがフレディは違います。勿論ジャッキーの演技力の賜物でもあるのですが、明らかにオリジナルとは別の存在として復活を果たすことに成功しています、より残忍により狡猾に! イマイチここでの評価は芳しいとは言えませんが、少なくともリメイク版「13金」よりは良く出来ているのではないでしょうか。作品全体を覆う恐怖度としてはどうしてもオリジナル版には及ばず、安易なドッキリシーンの乱発ばかりに頼ってしまうという粗も正直目立ちます。でも“怖さ”を主眼において、シリーズ特有のおふざけ感を完全に除外した姿勢は評価すべき。 ただジャッキーのシリアスフレディで更に続編を企画するには無理がありそう。決してジャッキーのニューフレディ、悪くありません、というか個人的には好きな位です。だからこそ安易で無意味な続編を作ってジャッキーフレディの評価を落としてもらいたくはない気がするのです。 傑作とまでは言えませんが、なかなか面白く出来ていると思いますよ。 というわけで「エルム街の悪夢」シリーズ一括レビューを終了いたします。

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