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サバイバル・オブ・ザ・デッド
2010年6月12日公開

サバイバル・オブ・ザ・デッド

SURVIVAL OF THE DEAD

R18+902010年6月12日公開

kkk********

4.0

死者と男と男とエゴと

走っちゃイカンとか。 そもそも「ゾンビ」じゃねえし、とか。 老舗ならではの格式ばった重々しさで ゾンビ業界に睨みを利かす、 御大ロメロの最新作は 『大いなる西部』をベースとした風刺劇。 ハテ。『大いなる西部』って…? 1958年の西部劇ですか。はあ。 さすがロメじい、なんとも古いところを。 正直知らなかったし今更観ようとも思わんけど、 それでも言わんとすることはよく分かる。 それは、「荒野で銃を向け合う人間達」 ゾンビの蔓延という、 生死のかかった問題を前にして。 一方は、いかなる事情があろうとゾンビは 徹底的に撃ち殺し殲滅すべきという強硬派。 もう一方は、元は仲間であるべき化物を 何とか飼い慣らし共存を図るという穏健派。 それぞれがそれぞれに理はある。 が、それぞれに矛盾を抱えてもいる。 ホントは双方、それに気づいてもいる。 それでもお互いの立ち位置から動こうとせず、 そこに真実が手繰り寄せられることはない。 いつしか。 それぞれの主張は問題の解決を忘れ、 「正義は我にあり。」 己の力を固持するための旗印となり果てる。 さて。思い起こしてみれば、 これは御大ロメロが最初の映画 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』で描いていた、 「ひとつ屋根の下で銃を向け合う男達」と なんら変わりはない。 ゾンビという生死の狭間に囲まれながらも、 どこまでも「我」を張り通す人間達。 ただ、この最新作におけるロメロの目線は、 そんな人間の醜い側面に顔をシカめ 苦言を呈すと言うような堅苦しいものではない。  それが人間なのぢゃ。  己の信じる通りに、正しいと思う通りに  自ら進んで行動する。  その「意思」こそが生きている証。  生きた人間だからこそ、  自分が大事なのだ。身勝手なのだ。 そんな人間の醜い性質を、 魂の抜けたゾンビ達が虚ろにコピーをする。 その、全くもって滑稽な姿。 血と、臓物と、肉片と、 作中に散りばめられたドギツイ悪趣味。 それはまるで、 嫌味が大好きなヒネクレ者のロメじいが 愚かな人間を指さし 呵々哄笑している様にも見える。  愉快じゃのう、ふぉっふぉっふぉ… 全く、(呆) ホラー映画としてどうとか、 エンタメとしてどうとか問われれば 確かに地味で見せ場も少なくて面倒くさいけど。 ロメじいの映画はやはり相変わらずに面白い。 この半世紀にもなるキャリアで 常に「巨匠」と呼ばれ続けていたロメじいは、 今に至って再びピークを迎えているようだ。 殊にあのラストカット。 『ナイト~』の" Good shot "から 毎度毎度そうだったけど、 全てを集約するかのような渾身のラストは いつにも増して辛辣な毒を含み、味わい深い。 それだけに、 最後のモノローグはいかにも説教じみてて 余計だったような気もするんだけど。 え。…文句があるなら帰れ?? あーはいはい、ごもっとも(笑)

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