あらすじ・解説
昭和41年、放火された静岡県清水市の味噌工場から、刺殺された一家4人が焼死体で見つかるという事件が起きる。立松刑事(石橋凌)は元プロボクサーの従業員袴田(新井浩文)に目を付け、容疑者として逮捕するが物証はとぼしかった。裁判官として静岡地方裁判所に赴任した熊本(萩原聖人)は、主任判事としてこの事件を担当することになる。
シネマトゥデイ(外部リンク)
作品レビュー(82件)
- cyborg_she_loves
4.0点
袴田事件について知らない最近の人たちには、一度はぜひ見てほしい映画ではありますが、「ああこれが袴田事件か」と納得して終わりにしてほしくないとも思います。 例えば石橋凌さん演ずる立松刑事。 あるいは大杉漣さん演ずる吉川検察官。 この映画での彼らは、要するに自分が手柄を立てるためなら被疑者を拷問しても殺しても屁とも感じないただの怪物であり悪魔です。 こういう狂った連中が警察や検察を牛耳ってるからこんな冤罪が生まれるんだ、と、この映画を見た人たちは思う。 いやいや、問題はそういう個人の良心の欠如なんていうちっぽけなところにあるんじゃないでしょう。警察や検察にもっと良識を持った人たちが増えれば冤罪は生まれなくなる、なんていうことじゃないでしょう。 問題の根は、日本の警察組織、司法制度そのものにある。 最近のテレビドラマでも、日本の刑事裁判の有罪率が99.9%という異常な高率であることを問題視するものがありました。 いったん起訴されたら最後、被告が裁判で無罪を獲得できる確率は0.1%って、おかしくないですか? 警察や検察ってそんなに神様みたいに間違いを犯さないところなんですか? この映画でも「疑わしきは被告人の有利に」という裁判制度の大原則が言及されていますが、心情的にはどんなに被告人が疑わしく見えても、被告人が犯罪を犯したことに対する「合理的な疑い」の可能性が存在する場合は、被告人を有罪にしてはならない、という法治国家の大原則が、この日本では今でもまったく通用していません。 さらに、仮に裁判が被告人に無罪判決を下したとしても、限りなくクロに近く見える人を、ネットが発達した今では世間が放っておきません 被疑者の実名や住所や家族の勤務先などをSNS上で暴露し、被疑者がこの社会で生きられないようにすることを、正義の実行だと信じている人たちが世の中にはあふれている。 仮に99人の犯罪者を無罪にしたとしても、1人の無実の人を有罪にすることがないようにすること。それが裁判制度の鉄則です。 などと言ったら、「バカいうな、99人の犯罪者をブチこむ方が社会がよくなるに決まってんじゃん、そのためなら1人ぐらい冤罪でブチこまれたって我慢しろっつーの。だってさ、そんだけ疑われたってことは、その犯罪はやってなかったとしても、普段から問題行動が多かったわけじゃん。そういうヤツってのはさ、ぶっちゃけ、いなくなった方がいいんだよ、云々」と思う人って、多くないですか? こういう人たちが社会を作り上げている限り、冤罪はなくなりません。 問題は、立松刑事や吉川検察官などの個人にあるんじゃない。私たち日本人みんなが考え直さなければならない問題なんです。 この映画は、袴田事件のごく大筋だけを紹介しているだけで、ただ悪魔的な刑事たちを悪者に据えただけで終わっています。 まあ2時間弱の映画で、こんな根深い問題を完全に描写することが無理なのは仕方のないところでしょう。 だから、出来るだけ多くの人に、まずこの映画を見て、問題に興味をもっていただいた上で、この映画をこの問題についてじっくりと考える出発点にしてほしい。この映画に描ききれていない無数の問題を、自分自身で発掘してほしい。 そういう問題提起の映画としては、とても意味があるとは思います。
- ind********
3.0点
苦く、悲しく、恐ろしく、重苦しい鑑賞になります。 高橋伴明監督作品にしては、抑え気味の演出で、淡々と描かれているように思います。製作陣は、それだけ冷静に何が起こっていたかを怒りを込めて描いているようです。 難を言えば、確かに裁判官の苦悩からの懊悩は分かるのですが、激しい演技ではなく、淡々と家庭のきしみを描いた方が、リアルだったかもしれません。 それにしても、権力側の都合で「事件を解決」「罪を裁く」ということの恐ろしさ、韓国の大統領権力による司法操縦が取りざたされていますが・・・この権力の自己都合、はたしてこの冤罪の時代、隣の韓国のお話でしょうか? 時の総理大臣の妻の名前を公文書から削除するため、公文書を改竄し破棄し、言うことをきかないものは自殺に追いやり、公文書改ざんの旗を振った張本人は、出世し、裁判にかけらても無罪になる・・・この日本の安倍政治の犯罪は、袴田事件の構図と何も変わっていないことに、司法の恐ろしいほどの権力への阿り、粘着性が、この国ではとても「無罪を勝ち取る」ことなどできないのだと、暗槓とさせられます。 袴田さんはお年を召され、時代は流れ、あたかも既に過去のお話となったかのように見えて、今すぐそこにある「国民の危機」であるのかもしれないと思わされます。 権力への警戒の警鐘を、心に刻むため、ぜひご覧ください。
- yok********
4.0点
この主役の裁判官の職務の貫き方、勇気に感動しました。それを知れた貴重な映画でした。残念のは袴田さんを演じた役者さんです。袴田さんに謝罪してほしい。
- km0********
5.0点
48年もの長い間の人生を奪われたことの悲しさ、悲惨さを考えただけで 怒りがこみ上げる。 真犯人を 捕まえずに終わったことから 警察の罪の重さ、闇の深さを感じる。 45年以上も 刑務所で毎日 死に怯えながらの生活って、、もう想像すると… とても想像しきれないけど、、どんなに苦しかっただろうと 胸が締め付けられる思いになる。 ドキュメンタリーで 出所後の実際の姿を見たが、精神をやられてしまっているのか、痴呆も進んでいるのもあるのか、あまり普通に会話ができる感じでない気がした。 でも、待っておられた家族(恐らくお姉さん)の気持ちを思うと、すごい深い愛情だなと思った。 熊本さん(役・萩原まさと)のような 正義感の強い人が関わってくれた事はせめてもの救いだった…かもしれない。でも、思いはあっても あそこまで行動に移してくれる人はなかなか居ないのが現実だろうな…とは思う。。 自分と周囲の人々を犠牲にすることも必要になるし。 でも、人を裁く立場にある人で、明らかに間違っている場合は あのように 正義感を行動に移してくれる人が増えることを願いたい…
- namix00
5.0点
袴田さんが釈放となる少し前にGYAOでこの映画を観て、怒りに震えた。そして未だに司法は同じ過ちを繰り返してる。と言うか、冤罪だけでなく、行政裁判でも民事裁判でも、国側、大企業側の論理に立つ判事が増えたように感じる。三権分立の誇りは無いのだろうか。無罪判決を書いたり、住民側を勝訴にすると、僻地の裁判所に飛ばされるとか言われているし。そういう理不尽な人事にも裁判官たちで手を組んで抵抗すべきでしょ。試験勉強を頑張ったのは、名もなき庶民を救うためではないって、そう思ってるのかな。本当に悔しい。 日本はまだまだ後進国だと感じる。
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