レビュー一覧に戻る
もうひとつの世界
2013年6月29日公開

もうひとつの世界

FUORI DAL MONDO/NOT OF THIS WORLD

1022013年6月29日公開

hir********

4.0

人生を見つめ直せたことはすばらしいこと

今後の人生を修道女として身をささげる覚悟のカテリーナと、クリーニング店を経営する独身のエルネストが、捨てられた新生児の母親探しを通じて偶然に知り合い、人生を再出発させるまでのようすを描いた1998年のイタリア映画の佳作だ。「VIVA!イタリア」という企画の中の、たった一日の、一回だけの上映を鑑賞できた。 修道女のカテリーナを演じたマルゲリータ・ブイと、もてない中年男のエルネストを演じたシルビオ・オルランドの快演が印象に残る。心身共に充実しているはずだった生活の中に潜んでいた「孤独」に気づいてしまった二人が、新生児の母親を一緒に探しているうちに心が通い合ってくるようすがよく表現できていて、二人の色恋沙汰のシーンがなくても、観客を最後まで引っ張っていく力があった。 中盤までは、新生児の母親らしき女性(20才)の物語の中での立ち位置がまったくわからない脚本なので、いささか我慢を強いられた。しかも、本作が、クリーニング屋のもてない中年男のエルネストが演じる喜劇として終ってしまう感じすらあった。しかし、修道女のカテリーナが修道服を脱いで普段着になったときから雰囲気が一変して、とても引き締まった感じの映画になり、物語がラストに向けて一気に収束していった。 鑑賞中は、本作の途中にはさみ込まれた「集合写真」の意味がわからなかった。しかし、ラストのシーンで、同じ写真に写っているのは同じ職場などの仲間たちだということがわかったので、集合写真の意味が写っている人の世界、環境、境遇を表しているのだと理解できた。この集合写真を使って、本作は、他の世界に生きる者同士は、それぞれの人生観や価値観を基本的に理解できないことをしっかりと描いていた。 カテリーナもエルネストも、他の人が生活している世界に踏み込んでみて、初めて、その世界の価値観が理解できるようになることを知ったのだ。だからこそ、二人はそれまでの自分の価値観を打ち破り、人生を再出発させる方向に歩み始めることができたのだろう。 2013年9月14日鑑賞 パンフ:販売されていなかった。販売していても買わなかったと思う。

閲覧数958