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ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2
2011年7月15日公開

ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2

HARRY POTTER AND THE DEATHLY HALLOWS: PART II

1302011年7月15日公開

hick

4.0

ネタバレ素晴らしいテンポの裏で犠牲が多い作品

パート1 は散々だったが、今作は原作の美味しい所というだけあって非常に満足できる内容だった。 ペース配分が素晴らしい。第1幕のアドベンチャー要素、第2幕の分霊箱破壊の戦い、第3幕のヴォルデモートとの戦い、とチャプターごとに綺麗に流れていてあっという間に過ぎていった。その中でも大事なシーンはじっくりとドラマを見せてくれる。特に2、3幕の間のスネイプの過去から森への出発まではじっくりとシリーズを総括でき、観客側もハリーと同じ思いで最終戦にのぞめるような演出。スネイプはもちろんのこと、ハリーを死に送り出すハーマイオニーやロンの姿を見て幼少期を思い返してみたり…。心打つシーンだった。 クライマックスは全作品を密かに繋ぎ合わせるような持って行きかた。倒し方を今作が「発明」するのではなく、実は初作から鍵を握っていたという「発見」はJ.K.ローリングが第1作目執筆中からすでに頭の中では完結していたかのようなストーリー。誰もが納得する完結。素晴らしい。 学校での戦闘シーンは規模がよく伝わってくる演出がされていて素晴らしかった。長回しのワンカット風で全体の状況を写す手法が多用されていて、壮大な戦国映画を見ているかのよう。戦う生徒たちの間をカメラがヌルヌル進んでいく撮り方は見ていて気持ちがいい。 その他にも、ドラゴンが飛ぶ時の壮大な曲を始め音楽がさらに素敵になっていたり、パート1 のポリジュース変身後の魔法省役の俳優たち同様、エレナ・ボナム・カーターのハーマイオニーの演技も素晴らしかった。 一方、ペース優先の構成で犠牲になったものもある。ダンブルドア弟の存在感の薄さや、金庫やレイブンクローの分霊箱までたどり着く描写がほとんどひらめきに近い事、かつ金庫にある聖杯がハッフルパフ属性のものとは分からない、また、なぜハリーは蘇りの石を捨てたのか、生き返ったのは石のお陰か、など映画では伝わってこない小さな疑問が湧いてくる。そしてパート1でもそうだったが、メインキャラの死をはし折ってしまっていた事や、ドラコとハリーの関係を描ききらなかった事は残念。たしかにペース優先の緩急がついた素晴らしい流れだったが、キャラクターベースの作品にとっては犠牲が多く、個人的好みとしては最後だけにもっとじっくりと見たかった。 またわがままとしては、最後の戦いは全員に制服を着て欲しかったなぁと思ったり…。これも10年間分の思い入れがあるからこそ。 それでも、原作が大人気かつ映画版は原作主義のシリーズでファンであれば全作品公開前から内容が分かっているのにも関わらず、こんなに賞賛される映画シリーズは珍しい。しかも誰の中にも自分の想像する映像があるという点で、大人気の小説を映像化するにはリスクも高い。それなのにこれだけ支持されるという事は、やはり製作陣の原作への愛が強かったのだと思う。そして、この制作がハイペースのシリーズで1人の俳優が10年間同じ役を演じ続けるという簡単そうで非常に難しい事(特に他の仕事が出来なくなってしまうベテラン俳優や、精神的に不安定な10代の俳優たちなら尚更難しい事)を達成できたのも大きな要因だったと思う。

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