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武士の家計簿
2010年12月4日公開

武士の家計簿

1292010年12月4日公開

たーちゃん

4.0

ネタバレそろばん侍

全く殺陣のシーンのない時代劇もいいものです。 江戸時代だからといって、年中刀を抜いていたわけではなく、こういう現在のサラリーマン、それも経理のような事をやっていた方だっていたと思うのです。 そういった点で、この作品は私にとってはとても新鮮に感じました。 当然算術もそろばんを使用してのもので、この頃は上の珠が2つだったのですね。それこそ私なぞは、小学生時代に少し授業でやった程度で、そろばんに関しては全くの素人でして。このようなそろばんも現在にもあるのかなどは全く知識として持っておりません。この時代に電卓やパソコンなどがあったら、どんなでしたでしょう。などとも思ってしまいました。 あとこの作品のみどころは時代劇ではあまり見かけない、武士の日常生活です。朝晩の食事に始まって、弁当などの料理や食材。結婚するにあたっての、ながれなどとても興味深い事が多々ありました。 ストーリー的には時代劇というよりもホームドラマ的な内容ですが、駒(仲間由紀恵)のキャラクターがとても可愛く見れてしまいます。 口癖が「~と言ったらどうします」と毒のある事を言ったあとに言うセリフが夫の直之(堺雅人)をドキっとさせます。 直之の父の信之(中村雅俊)、母の常(松坂慶子)、祖母(草笛光子)それぞれがヘンに意地悪とかではなくもきちんと駒を迎え入れて、そこでのドラマを描こうとしていないのがまた見やすかったです。常が自分の着物を駒に見せる事など嫁姑の関係がうまくいっているのが表現されていました。 この小袖は家の借金で売らなければならなくなって常が泣く泣く手離しますが、常の臨終の時に駒が買い戻して常に掛けてあげるシーンはこの二人の関係性をうまく描いていると思いました。 直之のあまりにも真面目なキャラクターがお倉米の存在に気付いてしまい、きちんとする事で逆に上司から嫌われてしまい、飛ばされそうになります。 その後この米の横流しが判明すると、直之のやった事が逆に認められ転任はとりやめになり、逆に出世します。 直之の事を表現するのにとても良いシーンだと思いました。 また長男成之の元服の日に絵に描いた鯛を宴席のお膳に並べる事によって、猪山家の財政が良くない事を親戚縁者にしらしめ、その後の借金返済のために家族の大切なものを含めて道具屋に売買し、お金を作ります。 直之が借金を見せたところ信之と常が驚きますが、借金をしている実感がなかったのでしょうか。結局はこれって先祖代々からの借金だったわけですよね。なんという無管理だったのでしょう。代々御算用者の家柄なだったのですよね。何でこんなに借金がかさむまで気が着かなかったのでしょう。 道具屋に全てのものを差し出す時に、駒が直之に縁日で買ってもらった櫛を出して、これは売らなくてもいいかを聞きます。それはいいだろうという直之。 この夫婦の絆を感じるいいシーンです。 家族のみんなは大事なものを手離す無念さで名残惜しく眺めたりするシーンは何となくほのぼのさを感じるシーンでした。 「貧乏だと思えば暗くなりますが、工夫だと思えば」 直之にとっては侍の誇りよりも、自分の生活を保つのを選択します。生活レベルを下げても自分の生き方をしっかりとしたいという直之の考え方が良いと思いました。見栄よりも工夫で生活を豊かに感じることの大切さは、今の時代にも通じる立派な考え方だと思いました。 特別大きな事件は起きません。ですがその状況で家族が力を合わせて乗り越えて行くさまはとても良かったです。

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