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大いなる幻影 (1937)

LA GRANDE ILLUSION

監督
ジャン・ルノワール
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4.29 / 評価:81件

勇気を与えてくれる一作

  • kor***** さん
  • 2013年7月8日 5時15分
  • 閲覧数 658
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

脱獄を始めとしたドイツへの反逆行為以外、何も制限されず、むしろドイツ人看守よりも良い物を食べ、トリュフをツマミにコニャックで乾杯。そんな優雅な生活も、一ヵ月後の先などまったく見えないまま過ごさなければいけない状況の中「喪失感」だけが増してゆく。勿論階級によって差はあれど、手厚い待遇を受ければ受ける程、自分が置かれている立場が時と共に次第に見えなくなっていく。アイデンティティー、故郷に対する思い。その両者が消えそうになるのを恐れ、この場から逃げようとする。それこそ「脱獄」である。

フランス人映画監督ジャン・ルノワールの名作であり、戦争映画のみならず「脱獄モノ」としては今日のジャンルを築いた最古の作品ではないだろうか?イケメンが女装した際に固まってしまう人々などユーモラス要素、そして後半からは恋愛要素などふんだんに取り入れ無駄のない社会派映画を見事に作り出している。「子供は兵士の真似をして、兵士は子供のように遊ぶ」戦争の悲惨さよりも、戦争が引き起こす人間の心理にスポットを当てる作りは、娯楽=映画という境界線を飛び越えている。

名優シュトロハイムの冒頭での演技と、中盤に再会した後の演技がまた素晴らしい。貴族としての気品さも見せつつ、怪我で戦場を離れてしまった自分自身への失望感に苛まれている。(背中の傷のせいで歩き方や姿勢がぎこちない。この演技がまたリアル)敵同士でありながらも、同じ貴族であるボアルデュー大尉(ピエール・フレネー)に対しては尊敬の念を抱く。

ただ一方は自国のニュースにも、仲間との昔話にも入らず、いつもどこか遠くをみつめているような男。「貴族」という滅び行く種族と認めつつも、寡黙に騎士道精神を貫こうと心には誓っている。その男の生き様がまた…。

脱獄を繰り返すジャン・ギャバンは無事フランスに帰れてもまた軍に入り、戦争が待っている現実に嫌気を感じるようになる。そこから逃げ出したいと思う願望こそまさに「大いなる幻影」であるのだ。それぞれの戦争やその先の未来に対する心境の変化はやはり絶妙。

また、反戦映画としてユダヤ人の友人とギャバンが雪の中歩き出すシーンにおいて、スイスとの境界線を忠実に守り、撃たないと決めるドイツ人に人間の希望を見出せるオチが秀逸である。友情や愛情はけっして幻影ではなく手の届くものだと、どんな状況でも忘れてはいけない。脱獄の先に幻影を見たのなら、幻影の先の未来を見るしかない。

詳細評価

物語
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映像
音楽

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