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わたしを離さないで
2011年3月26日公開

わたしを離さないで

NEVER LET ME GO

1052011年3月26日公開

h_d********

3.0

ネタバレ鑑賞後には深い考察の渦に飲まれてしまう作品

ラスト近くの「(クローンたちの)作品は魂を探るためではない、魂があるのかを知るためだった」との言葉に愕然としてしまった。 私には、クローンは純粋無垢な魂の持ち主であり、人に奉仕する運命を受け入れている言わば天使の様な存在なのではと思える。 逆に、クローンに当然のように臓器を提供させているこの物語の一般の人々の方こそむしろ、情の薄い無機質な、魂など無いに等しい存在の様に感じられた。 魂の経験値としては、必ずしも長く生きれば良い、というものでもないのかもしれない。 主人公のクローンであるキャシーの 「(提供する側もされる側も)皆"終了"する。」 「"生"を理解することなく命は尽きるのだ。」 という最後のセリフ。これを私は彼女の諦念とは捉えなかった。 クローンを利用し生命をより健康に長く保つ事にこそ価値がある、と考える一般の人々は、おそらく長寿こそが"生"なのだと理解したつもりでいる。 一方、人の為に自らの命を捧げるクローンの短い"生"を価値のないもの、などと捨て鉢になってはいないキャシーの、命尽きるまでは生きて行くという真摯さを感じるラストシーン。 たとえ理解には至らなくとも、"生"と過酷に対峙した経験は、しっかりとその魂に刻まれていくのだと思う。 映画では描ききれなかった主人公ら三人の感情の機微や、クローンではない人々の心理がどんなだったのかをぜひ知りたく、原作を読んでみることにする。

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