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海炭市叙景 (2010)

監督
熊切和嘉
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3.65 / 評価:201件

解説

5度芥川賞候補に挙がりながら、41歳で自殺した作家・佐藤泰志の遺作を映画化したオムニバス・ストーリー。北海道・函館をモデルにした架空の地方都市を舞台に、さまざまな事情を抱えた人々が必死に生きる姿を描く。監督は『ノン子36歳(家事手伝い)』の熊切和嘉。『アウトレイジ』の加瀬亮、『おにいちゃんのハナビ』の谷村美月、『春との旅』の小林薫らが出演する。リアルな人間ドラマとオール函館ロケによる映像に注目だ。

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あらすじ

北国の小さな町・海炭市の冬。造船所では大規模なリストラが行われ、職を失った颯太(竹原ピストル)は、妹の帆波(谷村美月)と二人で初日の出を見るため山に登ることに……。一方、家業のガス屋を継いだ晴夫(加瀬亮)は、事業がうまくいかず日々いら立ちを募らせていた。そんな中、彼は息子の顔に殴られたようなアザを発見する。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2010佐藤泰志/「海炭市叙景」製作委員会
(C)2010佐藤泰志/「海炭市叙景」製作委員会

「海炭市叙景」地べたを這いつくばるように登場人物たちに身を添わせる作り手の親密な眼差し

 1990年に自死した作家・佐藤泰志の故郷・函館を舞台にした5つの連作短篇小説を映画化したオムニバス群像劇である。

 ロバート・アルトマンは得意とする群像劇の魅力を<語り過ぎない方法>と形容したが、小話がパズルの断片のままに輪舞のように推移するこの形式は、安易なカタルシスをもたらさない。未完の劇の余白に不透明な陰りが生じ、そこへ見る者のさまざまな思念がしのび込むのだ。

 造船所の縮小で解雇され、初日の出を見に行く兄妹、妻の子供への虐待に苛立つ燃料店の2代目社長、水商売の妻の不貞に疑心を募らせるプラネタリウムで働く男、陋屋(ろうおく)に住み続け、立ち退きを迫られても、頑迷に拒み続ける老婆――。悲傷に満ちたささやかなドラマは、しかし、<神>のような鳥瞰的な視点ではなく、地べたを這いつくばるように登場人物たちに身を添わせる作り手の親密な眼差しがあればこそ、かけがえのない切実なトーンを孕み持つ。

 登場人物たちは、みな一様に疲弊と敗残の色を濃くし、深い喪失感を抱え、困惑の果てに、ふと放心の表情を浮かべたりもする。しかし、函館の街の眼に沁みいるような景観、そこで生を営む無名の市井の人びとをとらえるカメラは、あくまで澄み渡っており、忘れがたい印象を残す。

 熊切和嘉監督は、これまで意図的に誇張や欠落を仕掛け、オーソドックスな劇構造のバランスを壊す傾向があったが、本作では悠然たる語り口を堅持し、新境地に至ったと思える。(高崎俊夫)

映画.com(外部リンク)

2010年12月23日 更新

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