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ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人
2010年11月13日公開

ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人

HERB & DOROTHY

872010年11月13日公開

やふたろう

5.0

【無欲】欲なきことは美しき哉

単純に芸術を愛し、求め、育む。似たもの同志のヴォーゲル夫婦からほとばしる無欲の微笑みは、あいだみつをの言葉のように欲にまみれた小生に突き刺さる(涙)。 アートに携わる方々は必見のドキュメンタリー。本作のターゲットはかなり狭域であるはずなのに、単館系の映画館では満員になるほどの盛況振りのようでとても頼もしい。然しながら、Yahoo!映画のレビューはこれで3件目。ネットビューアーには見向きもされない作品であることも事実だろう。 同ジャンルのアート系ドキュメンタリーである『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』とは対極の作風。至って真面目に撮りあげている。ヴォーゲル夫妻の「法外な値引きを迫り、買い付ける行為」に不満を漏らす“評論家”が映しだされたが、みっともないジェラシーを際立たせるだけ。却ってヴォーゲル夫妻の無欲の行為が引き出され、観客に肯定される。見事な演出だ。 日本の美術文化。個人蒐集家が新たに現れるでもなく、公的資金のハコモノ行政はデビル・レンホーの登場で益々縮小傾向。企業経営の美術館についても、「上場会社」でなければ比較的自由な経営を行ってきたが、大塚製薬もポーラも上場が決まり、今までのように足枷のない作品の買い付けができるかどうか。株主から「儲かる美術館経営」を迫られたら手足が出ない。大塚美術館の場合はセラミックを焼き付けるだけだから何とかなりそうですが(笑)。 現在、日本において上場会社が経営する美術館は出光、京セラなど数える程度。出光に至っては上場するために泣く泣くセザンヌの『肖像画』を手放すはめになった。損保ジャパンだって、ゴッホの『ひまわり』を超高額で買い付けたのは前身の相互会社当時のこと。上場していたら、こんな買い物はできるわけがない。 ヴォーゲルコレクションが全米各地の~それほど有名でない~美術館に保管されている。英語表記のみになるが、『Vogel 50×50』またはドメイン『vogel5050.org』で検索すると面白い。現代アートの極み。何これ珍百景。 もう最後は蒐集依存症に陥って、買っても作品すら開梱しない有様。まるで、クレジットカード依存症に陥ったOLさんのベッドルームを見るようだ。翻って、小生だって映画依存症。何でもかんでも観たくなる。常に良作を求めるこの姿勢には猛省しかり、困ったものだ。ハーブ&ドロシーを見倣いたい。

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