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ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人
2010年11月13日公開

ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人

HERB & DOROTHY

872010年11月13日公開

しいちゃんのパパ

5.0

☆絵画4782点の重みと巣立ち☆

この映画の解説は、 他の優秀なレビュアーさんが 丁寧に説明しているので省略します。 今作の主人公である、ヴォーゲル夫妻が、 長年かけて、少しずつ集めた、 現代芸術の絵画数は4782点。 しかし、この4782点の総額は、 具体的には説明していません。 (金額に関しては、漠然と説明しているだけ) 『金が物を言うと、アートは沈黙する』 看板(だったと思う)に掲げられた文で問いかけるもの。 これだけの内容で、 この映画の断片が見えてきます。 お金で比較する以上に重要なモノを、 この映画は伝えているのだと。 むしろ、4782点の収集数の価値は、 金銭的なモノで測るものではないと言っているかの様に。 ドキュメンタリー映画であります。 現代芸術の世界という、疎く、遠い世界の話でありますが、 ヴォーケル夫妻のユニークなエピソードや生活ぶりがメインであり、 そういう点では、ドキュメンタリー映画にありがちな 敷居の高さは感じられません。 とは言え、今作に出演する現代アートの芸術家達の証言や、絵画を通じ、 現代芸術に精通している方なら、感涙・感動ものであるのも、 この映画のもう一つの面白さでありますが。 『給料で買える値段であること。』 『小さなアパートに入るサイズであること。』 『実際に自分の目で見て、「良い」と思ったものしか買わない』 この映画の一番の面白さは、 この3点のシンプルなルールで、 長年かけて、集めた4782点の現代芸術の数々。 一切売らず、その純粋で、一貫した収集の姿勢は、 営利目的、打算的で、生きている、 私達に、重要な再発見を提示していると思います。 先にも書いた様に、 打算的、営利的に賢く生き、 先を読んでリスクを回避する、 無欲で純粋に生きていく上では、難しい世の中であります。 それでも、この夫婦に憧れてしまう理由は何故でしょう? 今、その理由を上手く、言葉で説明はできません。 上手く、自分で考え、 解釈・咀嚼して、自分自身の世界の豊かさの糧とする。 これが、私なりのこの映画の楽しみ方であると思います。 今作は、☆満点。 リアルな社会で、こういう人が居ます。 それを丹念に描き、観客に、解りやすく、観る側の心に自然に伝わる。 ドキュメンタリー映画としての目的は充分に果たしていると思います。 今作では、ヴォーケル夫妻には、子供が居ません。 子供か居ない代わりに、4782作の絵画に、 深い愛情を注ぐことができたのでしょう。 だからこそ、アメリカのナショナル・ギャラリー等へ寄贈する時の、 ヴォーケル夫人の切ない台詞が、心に響いてきました。 しかし、4782点の絵画にとっては、実に幸せな事であり、 理想的な旅立ちであり、巣立ちであると思います。 この映画を観ることができて、本当にラッキーでした。 純粋に、創造性を具現化する芸術家を応援し、 見えるものだけでなく、背景を知ろうとする、夫婦の姿を通じ、 心が豊かになるかの様な、清々しい気分は、 この映画を観てよかったと思います。 ジャンルが異なるにせよ、 創造の産物である映画鑑賞にも、通じるものがあると、 思うのは私だけではないでしょう・・・。 資本経済という社会の事情、 貨幣を通じ、価値や優劣をしてしまうのは仕方ないでしょう。 しかし、貨幣を使っても、評価できないものがあります。 この映画を面白いと感じるのは、 潜在的に、そういう事を知っている事の 表れではないでしょうか?

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