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ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人
2010年11月13日公開

ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人

HERB & DOROTHY

872010年11月13日公開

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4.0

コレクター、かくあるべし。

4000点ものアート作品を所蔵し、それをアメリカ全土の美術館に寄贈した夫婦、なんていうと「さぞかし金持ちなんやろなぁ」と思うかもしれませんが、全然そんなことないのです。 現在88歳になる夫のハーブは元・郵便局員で、一回り年下の妻ドロシーは図書館司書として長年勤めた人。マンハッタンの1LDKのアパートに住む、何の変哲もない一般市民です。ただ、二人とも無類のアート好きで、ミニマルアートやコンセプチュアルアートの作品を30年の間に実に4000点以上も買い集めたという以外は。 この夫婦の信条はきわめてシンプル。 「自分たちの収入で買えるものしか買わない」「アパートに入る大きさのものしか買わない」。そして、「実際に自分の目で見て、『良い』と思ったものしか買わない」というもの。 そこには難しい芸術論も資産運用目的もなく、ただただ「好きだから、買う」というピュアな愛好者スピリットがあります。 だから彼らは、まったくの無名のアーティストの作品でも分け隔てなく購入します。それによって助けられたアーティストも数多く、また、彼らが作品を購入した無名アーティストの中でも、後に世界的に有名になった人も少なくありません。ただの好事家ではなく、二人はしっかりとした審美眼を持ち合わせているのです。 40年以上の夫婦生活でついに子供に恵まれなかったというハーブ&ドロシー夫婦にとっては、アート作品こそが愛する「我が子」だったのでしょう。コレクションをナショナルギャラリーに寄贈した際の「息子を大学にやるような気持ちよ」というドロシーの言葉が印象的でした。 本作はドキュメンタリー作品としては決して傑出した出来という程ではなく(監督は日本人女性!)、90分が妙に長く感じた瞬間もあったりしたのですが、この夫妻の魅力もあって気持ちの良い映画になっています。なんと、好評をうけて続編の製作も決定したそうです。2人にはまだまだ長生きしてもらわなきゃいけませんな。 それにしても、金がかかる夫の趣味に黙っててくれるどころか自分も一緒に夢中になってくれるなんて……普通、現実的な奥様なら「こんな道楽にばかりお金使ってこのタコ亭主!!」と言うのが普通でしょうに。 ハーブさん、いい奥さんに出会いましたね。 これからも夫婦仲良く、お元気で。

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