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大いなる西部

大いなる西部

THE BIG COUNTRY

166

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4.0

ネタバレ広大な荒野で

主人公が東部の船乗りという異色(?)の西部劇。 主人公のジムは船乗りだが、金持ちのボンボン優男、といった感じで、そんな男が荒野の砂埃舞う西部に佇むのはちょっと違和感がある。早撃ちのガンマンでもないし、喧嘩っ早くもない。 彼は西部流の「おもてなし」を受けるわけだが、彼は毅然として仕返しをしない。そんな態度に恋人も不審な眼差し。恋人は西部の女なんですよね。ゴミは焼却、汚物は消毒、やられたらやり返せ! やり返さないなんて私が恥ずかしい! っていうんですね。ごもっともです。 で、続けて牧童頭のリーチにも荒馬をあてがわれてからかわれるわけですね。それもやんわりスルーするジム。恋人は呆れちゃうんですが、ジムは決して忘れてはいないんですね。誰も見ていないところで練習して荒馬を手なずけてしまう。でもそのことを誰にも伝えないんですね。そこがカッコイイところですが、恋人はのちにその事実を知っても、私が馬鹿にされるから黙っていないでと言うんです。うーんこの……で、ここでジムも愛想を尽かしちゃうんです。なんたる阿呆女だと思ったのかもしれません。 ただ、どこぞの誰かが言っていたのか忘れましたが、この世には善人でも悪人でもなく、そのどちらにも転び得る人が約80%だとか、残りの15%は善人、5%が悪人っていうんですね。そんなことをジムとその恋人とのやり取りで思い出しました。恋人は西部のあらくれに染まっちゃってるんですね。和解とか絶対に無理だからもう殺せ! ってんです。ここが人間の怖さな反面、ジムの理性的な態度が光ります。 この話は、水源を争う二つの勢力を、ジムが理性と平和精神をもって調停するというものなんですが、この二つの勢力のトップは、相手への疑心や偏見でコチコチに固まってるんです。そこは2家が争うロミオとジュリエットを思い出させます。ただ、この話は主人公のジムが一方の勢力に引き込まれそうになったのを、これ以上争いを続けさせないために、かつての恋人から離れて奔走するというところが違います。 最後はジムが危険を冒して、臨戦態勢になっている相手の本拠地へ行くのですが、このテネシー家の首領さんは荒っぽいけど、どちらかといえば話のわかる人で、ジムを信頼してくれるのですが、息子のチンピラがしゃしゃり出てきて決闘することになるんです。このあたり、もう一人のヒロインのジェリーが関係してるんですが、ちょっと事情が複雑ですね。恋愛なのか友情なのかわからないし。 で、最後は両家の首領が決闘して相討ちになり、これで闘いはおしまいになるという話なんですが、面白いのはこういった西部劇にお決まりの型を一つも外さずに、かつ自然に物語を作ったことと、暴力の連鎖を断ち切るという現代に通じる問題を扱ったことです。 ただ、難点もいくつか。主人公のジムと、水源の所有者のジェリーがやや背景から浮き出ているように感じられたこと、つまり超然としているということなんですが、同時にそれは場に馴染んでいないということでもあります。他の登場人物はまさに西部劇! といった感じなのに、うまく出来すぎている人間のように感じられて、そこが少し説教くさくなってしまった。 もう一つあるんですが、これは実は繋がっている問題です。シンプルに平和主義と暴力の相克を描かずに、色んな要素を盛り込もうとしたこと、女性の存在感の大きさ、スタンダードな西部劇の見どころをもれなくつぎ込んだこと、これがジムの影を薄くしているのだと思います。もっと人肌をじかに感じるような、そんな直感的な暴力、その無意味さを描くとか、ジムの人間くささを強調するとか、そうすれば、まずくなった可能性もありますけど、テーマがよりはっきりとして傑作になった可能性もあります。 この作品、実はすごく面白いとは思うんですが、心に残らないタイプの作品なんですよね。そういう作品ありますよね。ケチをつけるなんてとんでもなくて、すごくよくできているように感じるんだけれど、何か「特別なもの」がないというか、すぐ印象からなくなってしまうような。今日はそこを掘り下げてみました。 ただ、何も考えずにみんなで見て楽しめる映画ではありますので、用途によってはお勧めです。ただパンチ力のある傑作に飢えている人は不満かも。ぼくは★4です。なかなかでした。

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