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再会の食卓
2011年2月5日公開

再会の食卓

APART TOGETHER

962011年2月5日公開

バツイチ王子

4.0

この作品が象徴するとても大事なこと

中国の国共内戦に関しては 昨年観た 「戦場のレクイエム」 鑑賞時に こってり調べていたお陰で、多少は役に立った 毛沢東率いた共産党は、中華人民共和国を興し 蒋介石率いた国民党は、台湾に逃れた 東西ドイツや南北朝鮮のように分断された国家と国民 その交流が40年ぶりに復活することで起こった とある家族の問題を描いた話だ 舞台は近代化途上にある中国は上海 夫のシャンミンと、幸せに暮らしていたユィアーは 国共内戦で生き別れた夫からの手紙に驚く 台湾から来訪した、その夫イェンションは 余生を台湾で、ユィアーと共に暮らしたいと持ちかける 複雑な申し出に対し戸惑う人々 ユィアーはそれにどう決断するか 現夫シャンミンはどう応えるのか そして、家族は何を思うのか 食卓において彼らの思いが交錯する 果たして彼らの行きついた結論は、というあらすじ 答えを出しにくく、叫びたくなるほど悩ましい状況だが エモーショナルに感情を煽ったりしないのが ユニークだ 軽めのコミカルな場面を挟んで、逆に場を緩ませ また、劇中のBGMは全く無くすことで わざわざ静かに、出来るだけたんたんとを見せる 会話もゆったりとして言葉も多くない 感情は沈黙という間を使って、さりげなくさりげなく滲み出る 「ソーシャル・ネットワーク」 のような 言葉を多くしたハリウッドらしく激しい映画とは対極 悠然とした大河が流れる、大陸的な表現方法が 彼らの複雑な場に置かれた苦悩を、じっくり見せてくれる また、食卓という場を使って心の変遷を写すのも面白い 言葉が常に正しく、正直な感情を表すとは限らない その情景を、感情の象徴と意識して見ると それは言葉よりも、ずっと雄弁だったりする ただメリハリには乏しく 起伏が激しいドラマチックを期待するとガッカリだろう 個人的には、こういう比喩的で行間を読ませる表現は好みだけどな 肝心のお話はとても考えさせられる 生き別れたイェンションが持つのは 続けられなかった生活に対するある種のスリル 国民党側で戦った彼は 元妻と生き別れるという絶望を持った やり直したい、という欲求はよく判る 彼女を支えたシャンミンが持つのは 暖かい家族を作り上げてくれているというリアル 共産党側で戦った彼は 国民党兵士の元妻を娶ることで出世を諦めた それに恩着せることなく、ただ彼女の幸せを願う 選択を迫られたユィアー 個人ではどうしようもない境遇 そこに置かれてしまった苦しい結果のやるせなさ 歴史に翻弄された彼らへのツライ現実がイタすぎる 上海の下町から近代マンションへの移行期にある家族 その最中に降って湧いた家族の問題 シャンミンの家族は内戦を知らず、三人の苦悩を理解できない それでも、目の前にある問題は現実だ 何らかの結論を出さなくては、この先に進めない それは、単に家族のあり方を問いかけるのではなく 近代化へと急成長をしている中国 その過去の負債の清算、そしてこれからの在り方を象徴しているようだ 今までの負の歴史を隠すのではなく、真っ直ぐ受けとめ 且つこれを背負って、これから生きていく決意が必要だ そんな断固たる覚悟を、複雑な状況はユィアーに迫っている それは近代化を進めていく途上で 中国という国が求められる過去への姿勢ではなかろうか 悩んだ末にユィアーは逃げることなくごまかさず 正面から悲劇に向き合い、つらい決断を下す 正しかったかどうかは、当人にすら判らないかもしれない またどちらを選択しても、痛みは必ず伴うのだ それでも、心底悩んで選択をすることが 彼女が果たさなければならなかった誠意だろう この家族のおかれた状況 これが、中国の抱える問題の象徴としたら いったいどんな風に向き合って行くのだろうか この、静かながら饒舌な映画によって そんな風に深読みをさせられてしまった

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