レビュー一覧に戻る
アンチクライスト
2011年2月26日公開

アンチクライスト

ANTICHRIST

R18+1042011年2月26日公開

gon********

5.0

「女こえー!」で済ませる男が怖い

と私は思いました。 男が怖いというと少し違うでしょうか。 男女の性質の違いそのものが怖いといいますか。 よく、男と女は別の生き物であるとかそういうことが言われますが、この映画ではそういう男女の隔たりをも描いているように思います。 タイトルからも分かる通り、宗教色の濃い映画であるので、素養のない人間がただのホラー、サスペンスとしてこの映画を評価するのは違うと思います。 私はそういった意味ではこの映画に対して考えが至らないと思い、ただのホラー、サスペンスとしての低評価が気になったために星5つとしました。 この映画が良いか悪いかはこの映画の全てのピースがきちんと理解できる方のレビューを参考にして下さい。 『三人の乞食、楽園追放、善と悪、エデンの園』などがヒントになるようです。 以下、キリスト教とは何たるか、が分からない人間の個人的感想です。 タイトルに戻りますが、この物語の中では、女性は我が子を亡くし、女性は自分の罪をひたすら苦悩しているのに対し、男性は我が子が死んだことも妻が病んでしまったことも、最後までまるで他人事のようです。 男性は自ら妻のセラピーを買って出、それは一見すると妻に寄り添っているようですが、それは男性側の勝手な物の見方で、妻であり母である女性としてはそんなものは微塵も求めていません。 男性に自覚があるのか無いのか、妻のセラピーを買って出たのは妻への愛ではなく、自分のセラピストとしての自己顕示欲のためではなかったかと私は思います。 この映画の中で、妻が本当にして欲しかったのは、自分に対するセラピストとしての治療ではなく、子どもの父として自分の夫として、子どもの死を一緒に苦しみ悼んでくれることだったのではないでしょうか。 子どもや妻に対する無関心は、妻の台詞や、子どもの検死結果を見るまである事実に気付かないといったところで表現されています。 そして、子どもや妻に対する無関心が最終的に妻を追い詰め、悲劇を生んでいるということに、映画が終わってもなお、夫は最後まで気付かない。 夫が映画の中で過去の自分を省みる様子は一度もなく、最後まで自分はただの被害者であり、悪いのは妻であり女。 ‥‥‥恐ろしい。 『女性は生まれながらに母性があるのが当たり前。女性が母性より女性を優先させると世紀の大悪党のように断罪されるが、男性は父性がなくても父性より性欲が優先でもそれが当たり前』 女性も動物である以上、性欲があり、だから子孫繁栄できるのに、性欲があることは女性において恥ずべきこととされるような風潮もあります(キリスト教においては性欲で行うSEXはまんま悪だそうですね) 母性と女性(性欲)、この映画の妻はまさにそうしたことで葛藤していたのではないでしょうか。 子どもが可愛いはずなのに、時に煩わしく感じてしまう自分、自分や子どもに無関心な夫をある種忌み嫌いながらもSEXできてしまう自分、子どもが亡くなって心底悲しいのに子どもの受けた痛みよりどこか自分の痛みのほうを優先しているように感じられる自分自身‥‥‥ そうしたことにまで思いを馳せてしまう私自身がメンヘラ気質であるのは否めませんが、考えすぎる女性に対し、「考えすぎ、気にしすぎ」で一蹴しがちな男性や、女性に母性を押し付けて我関せずな世の中の風潮には疑問を感じざるを得ません。 子育てというフィールドで女性の生まれながらの母性や細やかさを求めることと、社会的立場で合理性を求めること、その両立の困難さや矛盾に気付いて頂きたいと一女性として思います。 ‥‥‥と、少し脱線しましたが、「女こえー」で済ませるには、些か勿体ない映画であることは確かだと思います。

閲覧数1,060