ここから本文です

アンチクライスト (2009)

ANTICHRIST

監督
ラース・フォン・トリアー
  • みたいムービー 246
  • みたログ 591

3.05 / 評価:261件

解説

息子を事故で失った夫婦が深い悲しみと自責の念にさいなまれ、森の中の山小屋に救いを求めて迷走する姿を描くエロチック・スリラー作品。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の鬼才ラース・フォン・トリアーが、主演にシャルロット・ゲンズブールとウィレム・デフォーを迎え、絶望のふちに追い込まれた夫婦の苦悩とてん末を過激で大胆な描写を交えて描く。第62回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞したシャルロットの熱演に圧倒される。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

愛し合っている最中に息子を事故で失った妻(シャルロット・ゲンズブール)は罪悪感から精神を病んでしまい、セラピストの夫(ウィレム・デフォー)は妻を何とかしようと森の中にあるエデンと呼ぶ山小屋に連れて行って治療を試みるが、事態はますます悪化していき……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)Zentropa Entertainments 2009
(C)Zentropa Entertainments 2009

「アンチクライスト」鬼才トリアーによる自己チュー分析エンターテインメント

 忘却の彼方の感もあるドグマ95の誓い。提唱された自律のルールはいっそ不自由という自縛の術の獲得法ともみえて、そんな自虐的束縛を創造の原点とするラース・フォン・トリアーの映画作りの神髄を示唆してはいなかったか。自虐の要素を除去することが最も苛酷な自身の痛めつけ方(最大の快楽の取得法)と心得た監督の新作「アンチクライスト」の、ドグマお構いなしの(黒白、スローモーション、ヘンデルの調べ……)プロローグ! 迷いなくそれを差し出して映画は鏡張りの球の中の自我宇宙へと観客を導く。

 「ドッグヴィル」「マンダレイ」に続く一作が頓挫し陥った鬱状態を脱するためのセラピー映画。そう告白して改めて自縛装置を完備する監督は心療セッションそのままの問答で台詞を紡ぐ。子供(=新作)の死と対峙するセラピスト/夫(=トリアー)と患者/妻(=同)。ふたりでひとりの“私”を恐怖のピラミッドの頂点と認めるまでに通過する頭の中の景色。自問自答が画面の内(物語)と外(セラピー)とで微かにずれつつ響く。男と女、理性と直観、文明と自然の壮絶な格闘。心理劇、ホラー、寓話。ベルイマン「鏡の中にある如く」→聖書コリント人への第一の手紙13章→愛と信仰と希望→本作の悲嘆、苦痛、絶望。と、幾通りにも解釈可能の世界。だがトリアー界に在るのはトリアーだけ。ヒロイン(“私”のひとり)を葬っても顔のない無数の私(ヒロインたち)がまた湧き出でて地獄絵を完遂するだけだ。そこに創造源たる無間を確認し閉幕する自己チュー分析エンターテインメント。それは苦しさを喜々と楽しむ監督/神/悪魔の手の内をさらりと開示し、そのあっけなさでこそ興味深い怪作となっている。(川口敦子)

映画.com(外部リンク)

2011年2月24日 更新

本文はここま>
でです このページの先頭へ