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ラース・フォン・トリアーの5つの挑戦 (2003)

THE FIVE OBSTRUCTIONS

監督
ヨルゲン・レス
ラース・フォン・トリアー
  • みたいムービー 4
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3.00 / 評価:3件

「パーフェクト・ヒューマン」

  • CONRAD さん
  • 2012年2月17日 0時56分
  • 閲覧数 1332
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

映画として“売ろう”だとかウケを狙う意味合いを“できるだけ”省いているドキュメンタリー。
だから、これを鑑賞して感想を述べることができても、作品として評価することに意味があるとは思えない。

デンマーク映画界の巨匠ヨルゲン・レス。
ラース・フォン・トリアーは、彼の作品を観て、魅せられて映画の道に入った。
1967年にヨルゲン・レス監督が製作した12分の映画「The Perfect Human」。
トリアーはレスに条件(制約)付きで、この映画「The Perfect Human」を、5回リメイクしろと、“命令”する。

第1の挑戦
条件は4つ。
毎秒12コマ(フレームレートfps)(自然に動いている映像と錯覚させるための最小単位)で撮影しろ。
映画でナレーションがいくつかの“問い”をしているが、答え無き“問い”に全て答えろ。
キューバで撮影しろ。
セットを使用するな。

この時点でわかる。
人間が観て、不快だと思うような映像でもパーフェクトを表現しろ。
直観的、感覚的、芸術的な映像作品を、理屈でやってみろ。
“パーフェクト・ヒューマン”を白人ではなく、キューバ人で表現しろ。
セット(非現実)を構築することで、誤魔化すな。

アートと理屈は一緒になるはず。
アートを言葉で表現できるはず。
アートをもっとわかりやすくできるはず。
気取らない、飾らない、それでいて素晴らしい映画ってできるはず。

ラース・フォン・トリアーはそう強いる。
そのような条件下で撮影したら、映画にとって“致命的だ”と嘆く、ヨルゲン・レス。
ヨルゲン・レスは、スタイルを崩さず、突きつけられたイジメのような条件下で、洗練された作品を作り上げる。
落胆するラース。
ラースがかつて憧れた人物、ヨルゲン・レス。
ラースとヨルゲン・レスは、感性が違うのだ。
作品へのアプローチが異なる。

第2の挑戦
条件は5つ。
最も悲惨な地域に行け。
その悲惨な状況を直接的に撮るな。
ヨルゲン・レス本人が、パーフェクト・ヒューマンを演じろ。
女は出演させるな。
原作にあった食事シーンは入れろ。

ラースは思う。
悲惨な地域にいる人たちを描写して「パーフェクト・ヒューマン」を表現できるか?
パーフェクト・ヒューマンとは何か?
観客は、悲惨な状況下ではパーフェクト・ヒューマンを想像できないのか?
お前は、パーフェクト・ヒューマンなのか?
女性の美しさとエロに頼るな。
必要不可欠な事項(食事)があるのに(撮影するのに)、パーフェクトなのか?

ヨルゲン・レスはメンタルを保つのも大変だ。
安定剤を飲み、自分を奮い立たせ、自分を演出して、撮影に挑む。
映画でパーフェクト・ヒューマンを表現することは、こんなにも困難なのか?
パーフェクトじゃないヨルゲン・レス。
パーフェクトを多くの人に魅せるヨルゲン・レス。

第3の挑戦
条件はひとつ。
ヨルゲン・レスが自由に撮影してリメイクしろ。
過去の最高傑作「パーフェクト・ヒューマン」を超える作品を、リメイクして作り上げろ。

第4の挑戦
条件はひとつ。
もはや人間ではない。
アニメで、パーフェクト・ヒューマンを描け。

そして第5の挑戦・・・
条件は、撮影するな。
ラースが作成した文章、つまりナレーションを読め。
それ以外、何もするな。
でも、ヨルゲン・レスが監督だ。

ラースは、すべてを悟っていた。
ラストに語られる言葉は、ヨルゲン・レスの言葉であり、ラースの言葉である。


リメイクされた5つの作品。
どれがいい作品だとか、傑作だとか、そういう評価じゃない。
この映画をちゃんと解釈しているサイトにお目にかかれない。
ふたりの人物のこういうやり取り。
ちゃんとやり合う。
そういう経験をしたことがない人が多いのかもしれない。
でもやり取りをドキュメンタリー映画にしても、どうしようもないんだ。


次回は、マーチン・スコセッシに対して、このような対峙をするというラース・フォン・トリアー監督。
もうちょっとドラマチックに演出して、映画らしくするのだろうか?
実験的映画は、この映画で十分だ。
さぞかし、巨匠であり、有名人であるスコセッシは、料理しがいがある。

Cinefil Imagica

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