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一枚のハガキ
2011年8月6日公開

一枚のハガキ

1142011年8月6日公開

kih********

5.0

くじ引きで決めていいこと、いけないこと

寒村の農家の庭先。真正面から映し出される同じアングルが何度繰り返されただろうか。庭に並んだ家族から村の世話役まで同じ配列だ。兄が出征する。位牌となって帰る。弟が出征する。位牌となって帰る。兄の妻だった友子は未亡人となり、弟の妻となりまた未亡人となる。これだけの波瀾万丈が、同じ情景の繰り返しで静かに流される。  兵士の命運が上官のくじ引きで決定する。本人も家族も“運”だと納得する。強いていえば、上官のくじ運を恨むくらいしかできない。それでは、本人がくじを引けばいいか。そうでもなかろう。  人に死を強制する側には、我が責任と罪を“運”に置き換えさせる卑怯で巧妙な策だ。本来ならば、「俺の責任で、お前を死地に送る」とでもいうべきところだ。犠牲者に対しては「私の責任で死なせてしまった」と詫びるべきだった。それを、くじ“運”にすり替えてしまっている。こういう無責任な戦争に巡り合わされた不運を嘆くしかないのか。こういう無責任な戦争で勝てるはずがなかろう。  友子のところに『一枚のハガキ』を届けるのは、本来は誰の務めであったろうか。これを、“幸運”にも生き延びた戦友に押し付けていいのだろうか。

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