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星を追う子ども (2011)

監督
新海誠
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3.27 / 評価:1,784件

色々と無茶苦茶だけど映像は美麗

  • bar***** さん
  • 2018年4月18日 15時36分
  • 閲覧数 2201
  • 役立ち度 5
    • 総合評価
    • ★★★★★

星を追う子ども。新海監督の2011年のアニメーション作品。新海監督のイメージとは全く異なるファンタジー作品でした。

新海監督といえば、抒情的なアニメーション表現と、切ないシナリオが特徴。しかしこの作品はそういった要素に頼らずにまったく異なる方向性を指し示したと言えます。新海監督は、ひょっとしたらファンタジーを本当はやりたかったのでは? と思うくらいの熱の入りように、少しドキドキします。

小学生の女の子が主人公で、ある日化け物に遭遇しますが、謎の少年に助けられます。その謎の少年を追っていく過程で、地底世界「アガルタ」という不思議な神秘的世界へ入っていきます。

なるほど、とさせられるところもありますし、設定もふんだんに作られており、真剣に考えて幻想世界を作ったんだなあ、と思うのですが、細かいところに粗が目立つようになっており、感情移入は難しいです。

まず良質なファンタジーでしたら必ずやっている事なのですが、視聴者の情報をコントロールすること。視聴者は必ず現実世界からスタートします。そのルールを覆すことはできません。いかにして、ファンタジー世界へいざなうのか、そこが一番難しいところですし、監督の腕の見せ所です。良い作品というのは必ず、現実の価値観でも分かるような物事と関連づけて、少しずつ少しずつファンタジー世界へ誘います。たとえば小物からです。現実世界では決して存在しない魔法の機械のようなものを、始まりのシーンで主人公の部屋へ置いておく。すると、見ている人間は「ああ、これはファンタジーなんだな」と心構えができます。そして外に出たら、もう少し大きなファンタジー要素を提示します。現実では飛んでいない大型の飛行艇だったり、現実では咲いていない花や、現実では存在しない建物のデザイン、などです。

そしてそれらは、すべて物語に関わる物でなくてはならないというもう一つのルールがあります。物語と関係のないファンタジー的な設定は出してはいけません。視聴者はその情報を、どうやって価値判断し、どうやって頭の中に据え置けばいいのかわからずに混乱してしまいます。よって無駄な空白が生じ、作品の価値を低くしてしまいます。ポイントは「1、視聴者の状態に合ったファンタジー設定の提示を心がけること」「2、余計な情報を提示しなくて済むような作品設計をすること」この2つです。

この作品はこの2ポイントを完璧に守れているとは言えません。普通の小学生が日常的な生活を送っているところに、いきなり怪物が登場し、派手なBGMが鳴りわたり、見た目が柔弱な少年が、超人的な魔法の力のようなものを駆使して(見た目と能力が一致しない場合、視聴者の理解はもう1テンポ遅れます)、怪物を倒してしまいます。ど派手な光と共に、です。

ここで大半の視聴者は感情移入することができなくなってしまったのではないか、と思います。その後も、地底世界「アガルタ」を巡って、臨時の担任であり、「アガルタ」の秘密を探る組織アルカンジェリの大佐である森崎とのやり取りがあるのですが、まず先生の設定が複雑すぎます。組織の存在や名称といった設定、また大佐というばかばかしい階級に関しては、本筋とは全く関係がなく、余計な設定だということができます。それは物語の背景に追いやらなくてはいけないのです。視聴者は、すぐ理解することの難しい名称や概念が、2つ以上出てくると混乱します。また必然性(今ここで説明される必然性)が薄いと、さらに混乱します。

また主役のキャラクターは、視聴者の分身であるということ。視聴者が驚くべき事実が提示された場合、主人公も驚かなければ、違和感が発生するということを、このファンタジー映画は理解しているとは思えません。主人公の感情とわれわれの印象がある程度同期しない場合、視聴者には疎外感が生じ、絶対にその作品を面白いと思わなくなってしまいます。

新海監督らしいアニメーションの美麗さは残っておりますが、そういった粗の多さは見過ごせるものではありません。それは作品の根幹部分だからです。世界観設定など、それに比べたら些末なことです。まずは見ている人間が何を受け取り、何を印象強く感じるのか、きちんと調べてみなくてはいけないと思います。その上で作品を形づくらなくてはならないのに、地道な作業は嫌いだと思ったのか、この監督は無視しています。

同じファンタジー作品である『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』と比べてみると、この作品の持っている欠陥が非常に分かりやすくなると思います。上記2作品は、自然の共存や少年少女の成長というメインテーマを軸にして、視聴者の予想される反応から骨格を設計し、その後で肉付けしていることがよくわかります。新海監督はもう一度基本から学び、誠実にアニメーション作品を手がけて欲しいと思います。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • ファンタジー
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