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まほろ駅前多田便利軒 (2011)

監督
大森立嗣
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3.55 / 評価:834件

☆過去と向き合う。前へ進むきっかけ☆

先程、試写会から戻ってきました。
白状しますが、本当は、『唐山大地震』の試写会へ行くつもりだったのですが、
東日本大震災の影響で、試写会は中止、
映画公開も延期と、残念な気分だった頃に、
この映画の試写会情報を知り、
半ばヤケクソ気味で試写会に応募したら、当選した訳でして・・・。
正直、試写会がミニシアターだったせいか、地味な映画なのは想像できたのと、
この映画に関し、そんなに期待していませんでした。
しかし、実際見ると、いい意味で裏切ってくれました。
大作を見る様な過度な期待がない分、
それがいい方向へ好印象へと繋がりました。

原作は未読です。
ですから、原作の世界をどの様に映画化して解釈して表現したかについて
書けませんので、そういう前提でレビューさせて頂きます。

この映画の試写会が終わった後、後ろの席から聞こえたお姉さん達の会話ですが、
『いい映画だったね。しかし、子供には理解できないでしょうね・・・
 この映画の内容は。』
このコメントが、この映画の内容を代弁しています。
多田啓介(瑛太)と行天春彦(松田龍平)が乗っていた軽トラックが、
暴漢に襲われるシーンで、
多田が『なんじゃ、こりゃ!』と怒るシーンで、
行天が『全然、似てないって・・・』とぼやくシーンで、
くすっと、笑える世代なら、この映画の面白さは理解できるかもしれません。
この世代なら、人生のイロハをある程度、知って理解していれば、
この映画の面白さを理解できないでしょう・・・。

この映画の基本というべき、根幹となるテーマは、想像ですが、
『過去と真正面に向き合い、そして前へ進むことへの難しさ』ではないかと思いました。
二人の主人公である、多田啓介と行天春彦、
それぞれの悲しき過去を背負い、生きていること。
けど、その生き様は、何処と無く、魂が抜けたかの様に感じ、
不幸な出来事を境に時間が止まっている様に感じる二人。

便利屋という仕事を通じ、様々な人々に出会い、何かを感じ、変化しはじめる二人。
様々な出来事と、それに絡む台詞。
『誰かに必要とされるってことは、誰かの希望になるってことでしょ』
『おまえの親が、おまえの望む形で愛してくれることはないと思う。
だけど自分には与えられなかったものを、新しく誰かに与えることはできるんだ』
フランダースの犬の有名な最終回の内容は幸福なのか?不幸なのか?
行天の小指の内容の意味と、過去の心の傷との見事な絡め方。

多田と行天の二人の微妙な関係と
絶妙な距離感の表現の上手さもこの映画の特長。
会話が絡みそうで絡んでいない空気感。
それでいて、何故か、絶妙な関係を見せる二人。
しかし、二人は本音で話そうとしない。
それは、互いに何か、悲しい出来事を抱えているが、
苦しく、もがき苦しんでいる。
過去と決別したい。前へ進みたい。
しかし、過去と真正面に向き合う勇気がない。
過去と向き合う勇気のきっかけが欲しいかの様に・・・
多田が行天がそのきっかけを求めているかの様に感じ、
行天も多田にそのきっかけを、求めているかの様に
だから、二人は中々、離れそうで離れない関係が続いたのかもしれません。

10月の出来事。
多田と行天は互いに悲しい過去と向き合う。
便利屋という仕事で感じたこと。
台詞の積み重ねが、ようやく向き合うことになったのだと。
結局、過去と決別して、前へ進んだのか?進んでいないのか?
私的には、数ミリしか進んでいないと感じた。
それでも、いいのだ、1ミリでも、過去と決別し、前へ進んでいるのだから。
多田と行天はそうやって、確実に前へ進んでいくのだろうと、感じる。

受け売りですが、この映画の監督曰く、続編も制作したいとのこと。
原作は、続編があるそうですが、
これから先、二人はどこまで、前へ進んでいくのか?続編で見ていたい。

この映画は、地味な印象が強く、そんなに、ヒットはしないかもしれない。
どちらかと言えば、オトナの感性の映画であり、玄人タッチの映画だから。
しかし、オトナというものは、誰も、悲しい過去を背負って生きているものだと。
その過去と向き合うか、或いは避けて生きているものだと。
それを知るだけでも、この映画を見て、損はしないだろう。

最近の映画事情は、東日本大震災で、映画全体が萎縮状態にあるのは確か。
その萎縮状態という空気の中で、この映画を見るのは意外な発見があるかもしれない。
『映画は娯楽だ。明るい映画も必要だ。』という意見もあるだろうが、
こういう、ゆったりとした気分で、地に着いて、
人間臭さの面白さを感じるのもありだと思います。

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