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マーラー 君に捧げるアダージョ
2011年4月30日公開

マーラー 君に捧げるアダージョ

MAHLER AUF DER COUCH/MAHLER ON THE COUCH

1022011年4月30日公開

Kainage_Mondo

4.0

予告編に優秀編集賞を差し上げる。

いや~参った。原題は 「カウチの上のマーラー」 だって。要するにカウチに仰臥し、自由連想法で精神分析を受けるマーラーってことで、彼がフロイトの滞在先を訪ね、強引に一昼夜に亘って語りつづけ精神分析治療を受けるシーンから、回想が拡がってゆくという構成。勿論そんな短時間で治療できる筈もなく、結局は教会での告解と大差なく、フロイトの車中でのまとめの一言も簡潔そのもので唖然であった。あんな無茶して請求書の額はバカ高かったに違いない ・・・ 事実かどうかは判らないけれどね。 本編を切り刻んで繋ぎ合わせ、感動を予感させる見事な予告編に仕上げた宣伝部の方々は実に ・・・ 偉い ! しかも嘗ての 「ターミナル」 みたいに、予告編は感動的だが本編は屑、という訳でもなく、本編もなかなか見所たっぷりの力作だったと思うし、ねぇ~。 クラシックに不案内な私である。マーラーと言えば交響曲第5番、第5番と言えば 「ベニスに死す」 という連想しか働かない。あの映画の主人公アッシェンバッハは、マーラーをモデルにしたと言われていたし、幼い女の子の棺を見送りながら泣き崩れる母親、慰めつつ肩を抱くアッシェンバッハの姿は印象的だった。 泣き崩れていた妻はどんな人物だったのか ・・・ 映画は巻頭、事実は正確に事実、ただしそれぞれの中身は創作、という字幕を出す。音楽の才能もある社交界の花形で、全裸も厭わずクリムトの絵のモデルも務め、あちこちで浮名を流した女性アルマが、19歳年上のマーラーに嫁いだのは事実。演ずるバルバラ・ロマーナは美人で肉感的なうえに鼻っ柱も強そうで、まさに嵌り役の印象だった。唯我独尊的マーラーに不満をぶつけ、公然と浮気を宣言して離婚を口にし、それでいてマーラーの作曲や劇場監督としての才能に魅了され続ける両価性、アルマの魅力を堪能させてくれる。それに引き換えマーラー役のヨハネス・ジルバーシュナイダーは熱演ではあるが、今ひとつ魅力に乏しい感じで残念だった。 アルマの母親や、マーラーの妹、新聞記者や、ウィーン国立歌劇場の関係者の証言が挿入された不思議な構成で、マーラーの人物像が薄ぼんやりでも掴めたつもりになるから不思議だった。 パーシー・アドロン監督75歳の作品、あの 「バグダッド・カフェ」 から23年、まだまだ衰え知らずなご様子で嬉しかったなぁ~。

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