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マーラー 君に捧げるアダージョ
2011年4月30日公開

マーラー 君に捧げるアダージョ

MAHLER AUF DER COUCH/MAHLER ON THE COUCH

1022011年4月30日公開

bakeneko

5.0

ネタバレなんてそっくりなアルマ!

Wikipediaを始めとして写真が沢山ありますから御確認下さい(雰囲気まで再現しています)。 真正面から”マーラーの音楽と妻アルマとの歩み”を深く解剖して見せてくれる作品で、作曲家の伝記映画としての本格的&通好みの音楽的な引用に加えて、”夫婦の愛情とは?共に生きることの意味は?”という普遍的なテーマまでも追求している意欲作であります。 マーラーがフロイトの精神判断を通して”自己と妻の過去を回想する”ことで、”夫婦の関係とは何だったのか”を解析して見せる作劇法で、他の登場人物の”証言”も交えて”2人の心理”を解き明かす語り口は抒情性に流されない明晰さを示しています。 また音楽家の伝記映画としても秀逸で、交響曲4,5,8番や歌曲など御馴染みの曲の他に、マーラーが影響を受けたワーグナーやバッハの曲もきちんと織り込んでいます。 そして、先人の作品「マーラー」(ケンラッセル版)や「ベニスに死す」へのオマージュ的シーンもしっかりと示していますし、(クリムト、ブルクハルト、ブルーノワルター等の)同時代の著名人も賑やかに出てきます。更に、マーラーの妹のユスティーネを始めとした親戚の人々も細やかに造形されていて、双方の親族の立場も興味深いものがあります。 細かいことを言えば、ウイーンフィルからの辞任時期&各交響曲の作曲日時&アルマとの交際時期などには、幾つか誤謬がありますが、(映画の冒頭にも語られますが)大きな本質では事実を掴んでいます(実際第5交響曲のアダージェットはアルマに捧げた曲ですし、彼女は実際に譜面の清書を手伝っているのであります)。 そして、フロイトとの会話で次第に明らかになってくる”夫婦の心理”と”夫側のエゴの正体”は、まだまだ”夫の人生航路を妻が支えて当たり前”な夫婦観がある日本人には”身につまされる”ものがあります。そして本映画は、上手くいってないようだけれどしっかりと繋がっている夫婦という奇妙な絆を描きだすことに成功しているのであります。 マーラーの時代と音楽をしっかりと紹介してくれる作品でありますが、 音楽史にある様に、最初は”悪妻”に見えたアルマが次第に理解出来てくる演出に”夫婦の本質”を見せてくれる大人向きの愛情映画でもあります。 ねたばれ? 1、実際には第5交響曲はウイーンフィル辞任の後作曲されましたし、この時期にアルマと出会っています。 2、字幕では英語読みで”シンドラー”となっていましたがドイツ語の”Schindler”は”シントラー”と発音します。 3、劇中のウイーンフィル解雇の理由推測に関するセリフ” シェーンベルクの曲まで演奏するからよ..”には(個人的に)納得であります(斜め前の席の方も頷いていました―マーラーファンって同じ感覚だなあ)。

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