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小川の辺
2011年7月2日公開

小川の辺

1042011年7月2日公開

yut********

4.0

小川は、心の岸辺にせせらぐように……

藩士・朔之助は 正義を貫いたために脱藩した藩士・佐久間を斬れとの藩命を受け 家臣・新蔵を伴って、旅立った。佐久間は、妹の夫でもあった。 旧友である義弟を斬れるのか……。妹は、どうなるのか……。 東山紀之さんのりりしさが、ひときわ際立つ作品でしたが 何よりも、タイトルの“小川”の風景が、そこここに、絶妙に生かされ 趣きを添えていたのが、とても良かったです! (以下、結末はボカシて、思うところです) ▼▼▼ ? 「武士とは、むずかしいものだな」 藩政を思えばこそ、藩主の不興を買ってしまった佐久間にも そんな義弟を斬れという、藩命を受けた朔之助にも、 武家の不条理がある。 多用される、朔之助の瞑想シーンは、”迷い”だったと思う。 道中、朔之助は、姉弟による仇討ちを目にする。 彼らは、手が震え、とても人を斬るどころではなく 仇の侍も、さやには、木刀しかない、“さや侍”だ。 いずれも、武家の名を汚さぬように 体面を張って、生きてきた者たち。 「武士とは、むずかしいものだな」 とつぶやく、朔之助の背中が、広く見える。 その背に背負うものもまた、むずかしいものだとの想いを新たにする。 ? 「ゆっくり参ろう」 作品は、朔之助が佐久間を捜し当てるまでの“道行き”でもあり 近づくことは、どちらかの死に、近づくことでもある。 ~死に近づくこと~ それはそのまま、生きる(命の営み)という歩みでも、あったのかもしれない。 少しでも、先延ばしにしたい……. その想いは、季節を遅らせるかのように 実家の木に、花を咲かせない。 祈りを託された花は、家族たちの想いとともに、 ラストシーンに呼応していくのが、いい。 ★☆? 小川のせせらぎに想う ☆★ 小川は、作品を流れていく。 朔之助の道中、所々、流れる小川が、涼やかで清らかなせせらぎを 耳に運んでくれるのが、とても心地よい。(涼みましょう♪) 船で行く川にも、ギッチラコと、抱かれるよう…… この流れは、朔之助を導くべきところに導くものであり 流れゆく時の流れでもあるのだが 、それは 幼いころから続く、心の流れでもあったのだ!(原作未読の私には意外だった!(>_<)) 武士の生き様、家族の想い、そして、 斬るか斬られるか…… それらが、渦巻きながら怒涛となって、作品は終わるものと思っていたが 心憎いかな(>_<)、この作品は、『小川の辺』というのだった…… 時は戻らないけれど、なりゆきは、今一度、 朔之助らを、幼い日の“小川の辺”に戻した。 (“小川の辺”とは、単に、佐久間の隠れ家があった場所ではない!と言っておこう!) それは、彼ら(共の新蔵・含む)の“心の岸辺”でもあったと言えよう。 不条理と言ったが、そこには 切なさ、哀しみ、無念あるいは、あきらめという閉塞感も、あるかもしれない。 皆、耐えながら生き、生きなければならない道を生きるしかないけれど 抗えない運命と言う濁流(増水)は、そこにあったかもしれないけれど 行く川の流れは、同じ流れではなく 出口を見つけて、流れ出す! (そうだったのか!と思いつつ、もうちょっと緊迫しても良かったかな…^^;) そうして、新たな流れが、新たな季節を告げるように 時を止めていた木にいっぱいに咲いた、清廉な花の白さが、印象的だ。 そこには、もう、余計なセリフがないのがいい。 あるのは、 確かな足取りの、りりしい武士の姿。 そして私たちも、歩んでいる…… ▼▼▼ 路傍の草々、遠くの山々…… 済んだ空気、柔らかい日差し……そして 冷たさがヒンヤリと感じられるような、小川のせせらぎ……(涼んで☆) この、静かな時の流れを、余韻にして、感じればいい…… 誰もが、それぞれの運命という、小川の辺を、生きているのだから…… 短編の映画化は、長編のあらすじになることなく、 ゆっくりと情景を見せてくれて、心を重ねられると思います。 さらさらっと流れる印象も、あるかもしれませんが^^; 原作未読の私には、意外な展開で、良かったと思います☆

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