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大鹿村騒動記 (2011)

監督
阪本順治
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3.59 / 評価:419件

村の歴史をきちんと踏まえた作品。

  • pin******** さん
  • 2012年1月25日 20時59分
  • 閲覧数 226
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

大鹿村歌舞伎を扱った映画としては、地味ながらも僕の好きな『Beauty うつくしいもの』という作品があります。

そんな愛すべき小品があるにも関わらず、大物俳優や大々的な宣伝で、この映画を売り出すということに若干の嫉妬を感じていました。

エンターテイメントの陰になって誠実な作品が忘れられてしまいはしないか…。

しかし、この作品を見てそんな思いは吹き飛んでしまいました。

『…うつくしいもの』が、大鹿村歌舞伎を守った近代の物語だとしたら、こちらは、現代の大鹿村のおかれている厳しい状況と、にもかかわらずたくましく生きる地歌舞伎を、きっちりと描いた、やはり誠実な作品だったからです。

今日の地方の限界集落がおかれている現状を、さらりと流すようでいながら、きっちりと見据えているところに好感が持てました。

冒頭、リニアの開通が話題となり、映画全編を通じて、通奏低音のようにリニアのことが、話題となり続けます。

実は、この作品を見たのが、やはりリニアの中間駅ができることで街全体が浮き足立っているG県N市での自主上映会。

このリニアの話題が登場すると、会場は苦笑で包まれました。

本当にリニアが地域振興の役に立つのか、いや、リニア自体がこれからの日本に本当に必要なのか、何の論議もないうちに、リニア計画は粛々と進められていきます。

今、リニアに反対する者は非国民だとでもいわんばかりの雰囲気です。

この映画の中のように歯に衣着せずに、リニアのことを論議している地域なんかほとんどないのではないでしょうか。

もうひとつ、この作品が地に足の着いたものとして感じられたのは、大鹿村を地歌舞伎だけで見ていないことです。

リニアと同じようにこの作品の中で繰り返し語られるのは台風とそれに伴う集中豪雨です。

主人公の妻、貴子が記憶を取り戻すのは豪雨の音によってです。

また、その貴子が再び歌舞伎の舞台に立つきっかけとなったのは、バスの運転手(佐藤浩市)が、豪雨による土砂崩れでけがをしたことによります。

物語の展開に常に大雨が関わってくるのです。

実は大鹿村にとって集中豪雨は、忘れようとしても忘れることのできないものなのです。

中央構造線上にある大鹿村は土壌がもろく、集中豪雨による被害の絶えることがありませんでした。

映画の中でも触れられていますが、昭和36年の大災害では42人の犠牲者を出し、災害からしばらくの間は陸の孤島として救助の手も入らないような状態におかれていました。

支流から天竜川に入った犠牲者の遺体は下流の平岡ダムで発見され、彼らを荼毘に付す煙が幾日間も絶えることがなかったと言われます。

そうした大鹿村の苦難の歴史をこの作品はきちんと取り込んでいることに感服しました。

補足すると、こうした地方の災害は、人口の都市集中による国土の荒廃によることも原因の一つで、高度経済成長期以降、国土保全の意味もある林業の衰退をもたらし、その分、建設業が幅を利かせる原因ともなりました。

悲しい話ですが、過疎化の進んだ地方では「土砂崩れでも起きないかな・・・そうすれば、国から災害復旧の仕事がきて、食っていくことができる。」などという話がまことしやかにささやかれていました。

もし、原田芳雄や石橋蓮司のようなアクの強い男が地方に残り、佐藤浩市や松たか子のような未来を切り開拓く力を持った若者が地方に残っていたならば、地方の限界集落化、国土の荒廃は防げていたでしょう。

まあ、そんなことはあり得んでしょうが。

優れた地域伝統芸能である地歌舞伎があったとしても、大鹿村の未来は決して楽観視できるものではありません。

しかし、人々が地域に誇りを持つことでしか地域を活性化することはできないでしょう。

単にご当地映画という枠を越えた優秀な作品がつくられるのも、そこに住む人が、地域に誇りを持っているからでしょう。

それにしても、役者さんたち、楽しそうに演じていますね。

それこそ村芝居のような和気あいあいとした雰囲気が伝わってきました。

忌野清志郎の主題歌もよかったですね。

原田芳雄も忌野清志郎も今は亡き方。

感慨深いものがあります。(うっひゃー、長くなっちゃった。)

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