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大鹿村騒動記 (2011)

監督
阪本順治
  • みたいムービー 150
  • みたログ 905

3.61 / 評価:401件

よっ! 千両役者!

  • とみいじょん さん
  • 2018年8月3日 0時25分
  • 閲覧数 354
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

大鹿歌舞伎を中心に据えた物語。
 江戸時代、非行化したり、江戸に流入するのを止めたりするために、若者に熱中できるものをと、村おこしにと、都会から歌舞伎役者を呼んで始めたとか、巡業の歌舞伎をまねて始めたとか、結構いろいろなところにあった地方歌舞伎。ほとんどが廃れてしまったが、今も埼玉とか人知れず地道に残っている地方歌舞伎。そんな歌舞伎の一つであろう大鹿歌舞伎。

ゆる~い物語。
 「若気の至り」が40代の出来事で、「若くないだろ!」と突っ込まれはするものの、それから18年。すでに”老境”に片足突っ込んだ人々が織りなす物語。

緩さが心地よい。
 オムツをしているころから一緒にやってきた仲間だから。喧嘩しては仲直りしてきた仲間だから。
 しかも、”伝統の歌舞伎”を成功させるために、仲たがいしてもなんとか折り合いをつけてやってきた仲間だから。
 憎みたいけれど憎めない。排除できない。そんな絶妙な葛藤がにじみ出てくる。そんな割り切れない心情を見事に表現して見せてくれる原田氏がいい。

憎みたいけれど憎めない男を演じている岸部氏も圧巻。
 「ボケたから返す」とだけ聞けば、なんと虫の良い話よと悪態つきたくなるが、ボケて自分と善ちゃんの区別がつかない、実は善ちゃんの元に帰りたかったのか、だったらと、女を思う心が切ない。

同じように憎みたいけれど憎めない女を演じていいる大楠さんは、さらに女の業、そして大人の女の責任の取り方もちゃんとわきまえている女を演じきっていらして格好良い。歌舞伎本番中の一言に身震いしてしまった。

だから、この三人に感化されて一歩を踏み出す、佐藤氏と松さんが”青二才”にみえるし、とっても自然な流れを醸し出す。

かつ、そんな三人を見守る歌舞伎仲間がいい味を出してくれる。
 どう扱っていいのかわからないまま、「しょうがねえな」感満載で、なんとなく受け入れてしまうさまが、偽善的でなく、自然。本当に長年一緒にやってきた仲間なんだな。マンションの自治会とは、完全に一線を化す。

そんな中でも特に、三國氏の存在感。原田氏演じる善さんが泣き言を漏らしに行く場面で、唐突なロシアでの話。あんな風に切り出されちゃったら、「頑張ります」というしかないよなあ。
 実直そのものなんだけれど、古狸の面目、煙に巻くという、ぬらりひょんか?!といいたくなるようでいて、この人のためなら一肌も二肌も脱ぎたくなるような、否、嫌でも有無を言わせないような人物も、三國氏が演じると至極自然に見える。単なる好々爺ではない。稀代の名優だ。

そんな芸達者たちが、
稀代の名優と謳われた昔の歌舞伎役者(例えば、江戸時代の団十郎丈)を演じさせてもきっちり演じ切るであろう役者たちが、
地方のボランティア歌舞伎役者を、手弁当役者らしく演じ切る。ちょっとした調子外れも計算のうち。

「仇も恨みもこれまで、これまで」と未来に向けて大円団になる大鹿歌舞伎の演目。
そんな演目をベースに、善さんを取り巻く物語とが相まって展開する。
人生経験を重ねてきたからこその境地。
若かったら、こんな風に受け入れられないだろうと、器の小さい私はやっかむ。
心のとげはひっかかったままだけれど、やっていかざるを得ないからやっていく暮らし。
そんな、愛おしくも、くるしみもひっくるめた、おかしみのある物語。
こんな風に、私も大円団を迎えたい。

だから、
もういらっしゃらない名優お二人と、エンディングの歌に感慨を覚えるだけでなく、
鑑賞した後に、ユートピアを訪れて帰ってきたような気分になって、また何度も訪れたくなるのだろう。
瀬血がないこの世の中に、そんな映画をありがとう。





<蛇足>
こそばゆいネタも満載。
 「ディアイーター」って『ディア・ハンター』かいっ?何度か読み直してしまった(笑)。他の方のレビューで教えていただいたけれど、『ディア・ドクター』もかすっているかもしれないらしい。
 原田氏が歌う『おら東京さ行っただ』『木綿のハンカチーフ』も感慨深い。
 「居残り佐平治」は落語ネタ。フランキー堺氏で『幕末太陽傳』として映画化もされている。
 他にも、私が気が付かないだけであるかもしれない。

詳細評価

物語
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