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劇場版 神聖かまってちゃん/ロックンロールは鳴り止まないっ

mim********

4.0

歪さを抱えながらライブへ疾走する物語

本作『劇場版 神聖かまってちゃん』を拝見する前に 共通認識として必要な [神聖かまってちゃん]というバンドについて 恥ずかしながら私は殆ど知識がなかった為 ここ一週間、本作を拝見する下準備として [神聖かまってちゃん](以下[神かま])の音楽を聴いていました。 従前の私の神かまに対する印象は いわゆる私達世代【20代後半】が高校生の頃聞いていた ナンバガやゴイステ 一昔前だと筋肉少女隊やINUのような アナーキーな曲調が売りのバンドというイメージだったのですが 実際に聞いてみると、今まで私が聞いてきたバンドとは置き変え不能な オリジナリティに富んだバンドである事に気づかされました。 そのオリジナリティを端的に申し上げると ネット住民、非リア充の心情をここまで吐露するバンドが今まであっただろうか? と、私は感じました。 先日とあるラジオでマキタスポーツさんが最近の売れ線J-POPのロジックとして 歌詞に「翼」「キセキ」等を多用する事を挙げていましたが そのような口当たりのよい歌詞が全くない彼らの歌 歌詞の一例を挙げると 「目覚ましテレビの占いが僕に呪いをかけるよ」 耳障りで聞き苦しい分「現代」を切り取った リアリティに溢れている様に思うのです。 一方で日本映画界において神かまのように 痛々しい程「現代」の若者達のリアルを追求している監督が誰かというと 本作の監督である入江悠だと私は思います。 恐らくこの作品をご覧になられた方なら誰の心にも残るだろう 前々作『SRサイタマノラッパー』の焼肉屋でのラップシーン。 このシーンでは、地方でマイノリティな音楽にカブれ 崖っぷちの生活を送っている主人公IKKUの存在がリアリティに溢れているからこそ そのどうしようもない自分をラップとして 包み隠さず表現する姿に胸打たれるのではないでしょうか。 そしてSRシリーズで入江監督が描いた(表現としての)音楽を ジャンルは違えど現実に実践しているのが神かまなのではないでしょうか。 そのような意味でも、神かまを題材に入江監督が映画を撮るという本作 的確なアプローチだと私は考えています。 ではその試みがうまくいっていたのか という事をこれから書いていきます。 まず、本作を私はニコニコ動画の先行上映で拝見したのですが コメの割合としては「賛」が3割「否」が7割程で否定的な意見が多く見られました。 また、私の中でも作中に賛否混じる作品となりました。 最初に否定的な意見から 私が今までSR的な崖っぷちの若者達のリアルな人間ドラマは 残念ながら本作からは感じられませんでした。 というのも、まず根本的な問題として一時間半に満たない上映時間の中で プロ棋士を目指す美知子 バツイチ寸前のストリッパーかおりと息子 神かまのマネージャーの劔 それぞれの人物設定を周辺人物も含めかなりの広がりで描いている上に 例えば神かまのマネージャー絡みの物語は 短い尺の上に演技においては素人(ミュージシャン)が演じている為 リアリティのある設定なのにリアリティを感じない 入江監督らしからぬ状態に陥っていたように思います。 また、ストリッパー絡みの物語にも疑問が残ります。 まず前提として、そもそも幼稚園児が皆 神かまの曲にあれ程盛り上がるものなのでしょうか? 私はこういったジャンルの音楽の魅力は自我の芽生え(中学生頃)になって 認識出来るものだと思っていた為、この設定にも違和感を感じました。 ストーリー、役者の演技力にリアリティを感じないのです。 本来であればこの時点で映画としては失敗だったと申し上げたいのですが、本作はそれを補って余りある魅力もある作品です。 端的に申し上げると クライマックスのライブーシーン描き方ですね。 これは神かま門外漢の私でも感動できた素晴らしいシーンで 実際の映像を使用しているという事もあり その臨場感は『爆裂都市 BURST CITY』をも連想させるものでした。 またその素晴らしいライブシーンに 今まで描かれてきた様々な人々のドラマが重なり 前半の広く浅い人物描写への不満も 音楽が多くの人に波及していく感動への伏線だと考えると 納得の行く展開だと考えを改めさせられました。 クライマックスに近づくにつれ カットが細かくなり、映像的な技巧も施され 映画自体がカオスになります。 そして迎えるラストシーン 恐らく「神かま」を聞いて実際そうした人がいるであろう 【救い】のシーンに心を揺さぶられました。 あと全体的に役者の演技には疑問を感じましたが 『ガマの油』に続き二階堂ふみの存在感は素晴しく 個人的には今後注目の女優だという事を付け足しておきます。

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