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僕の大切な人と、そのクソガキ

inu********

4.0

ネタバレコブ付きのコブって何歳まで?

かなり前に飛行機の中で鑑賞しました。 主人がジョン・C・ライリーのコメディ好きで、これはきっと面白い!と踏んでいたのに、結局 映画館へは行けず、機内のプログラム表で見つけた時、笑いたい気分だな、と選んで観始めたのですが、笑えるどころか深刻も深刻、可哀想に思えると同時に心理的な恐怖が襲ってくる真面目なヒューマン・ドラマでした。なので、この楽しそうな邦題、は罠ですよ。 日本は成人しても親と一緒に暮らしている人、沢山いますよね。私も実家から会社務めをしていました。でもアメリカ人やオーストラリア人の同年代の友達からは「変だ」と言われ続け、18歳を過ぎて家を出ない奴は、この国(オーストラリア)では障害者だぞ、その歳になって親と同居なんて恥ずかしいと思わないのか?と不思議がられました。でも独立って何も住まいだけじゃないと私は思うんですね。日本はそんな簡単に若者が大きな家を借りたり出来ないし、ルームメイトが異性だというだけで、親たちは猛反対するでしょう。あそこの娘さんは精神的に可笑しいから両親の家に住んでいる、なんて日本人は普通、誰も思いませんよね。 今イギリスで周りの人たちを思い浮かべると、主人の従兄弟に1人、そして昔の職場の同僚に1人、そういう男性がいますね。中年と働き盛り、あの感じだと2人とも結婚する気は全くなさそうです。他の兄弟姉妹は皆、親元を離れて家庭を持っているのに、その従兄は仕事もせずに居座ったまま母親が運ぶ食事に有り付いているし、その同僚の私生活までは知りませんが、彼は暇さえあれば部屋に閉じ篭もってゲームばかりやっている(ゲームに関する質問なら何でも来い!という)かなりの達人で且つ相当な肥満体。DVDも豊富に揃えていて、何度か貸し借りもしましたが、最近はどうしていることやら。 さて本作、主役の3人は豪華です。皆、はまり役で素晴らしい演技でした。 ジョン・C・ライリー演じるジョンは、別れたくないのに離婚を余儀なくされた寂しい中年男性。ところが素敵な女性モリー(マリサ・トメイ)に出会います。ちょっと訳ありな気配が漂っていますが、やっぱり運命の女性。2人は自然と惹かれ合います。が、彼女にはサイラスという息子(ジョナ・ヒル)がいたんですね。20歳を過ぎて、まだ母親と一緒に暮らしているちょっと不気味な子。定番なのか、太っています。マニアっぽいです。変わっているように見えるけれど頭は良さそうです。そして母親の愛を独り占めしている環境、これを壊されたくない本音はじりじりと滲み出てきます。 まぁ、初対面の人に、いきなり全てをひけらかせる人間は少ないでしょう。だからジョンとサイラスはお互いを認め、仲良くやっていけそう、に2人共が振舞うんです、最初。でも腹の中では曝け出せない感情が蠢いている。私の記憶では確か、ジョンが前妻にも相談して、この家族を前妻に紹介して観察してもらい、後で意見を伺う、みたいなこともやっていましたね。傍から見ている分には大丈夫に思えるんですよ。サイラスが強かなので。 ジョンは好きな女性を諦めたくないから、我慢に我慢を重ねて踏ん張ります。全然、コメディ・タッチじゃないですよ。クソガキっていうゲラゲラ笑えるキャラではないんです。気を使って使いまくって、でも何を考えているか分からない、何を仕出かすか予測できない、微妙に恐ろしい息子。ジョンもよくあるコメディみたいに頑張り過ぎたりはしません。理性がありますから見切るという選択も眼中に入っています。 ラスト、私はちょっと泣いたかな。 なんていうか、例えるなら、『はだしのゲン』のゲンくんと絵描きの政二さんの関係ね。ジョンがサイラスに「もうええわい!お前なんかに付き合ってられるかい!」と、今まで積み上げた我慢も遠慮もお世辞もぶち壊してサイラスに本気で怒りをぶつける。ジョンが母親に近付かなくなればそれで本望!と思っていたサイラスも、ここまで真剣に自分と向き合ってくれた人間が過去にいただろうか、みたいなジョンへの愛着っていうのかな、2人がちょっと歩み寄ろうとする場面。 鑑賞してから随分月日が経ってしまったので、皆目 覚えていませんが、最後はそんな終わり方だったと思います。 母親の愛が心地好くて嫉妬の塊だった息子が、自分のせいで母親の幸せを逃してしまっては居た堪れない、と思い始めるようになれるまで成長できたのは、ジョンのモリーへの愛、そしてサイラスへの愛が本物だったからでしょうね。最愛の妻を蛇の生殺しのような形で失った男だからこそ、辛抱できたのかもしれません。 笑いたい時ではなくて、真面目な家族ドラマが観たい時には、レンタル程度にお勧めです。(←すみません、購入するほどの傑作ではなかったと思います)。

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