モラン神父
- bar***** さん
- 2017年2月12日 12時24分
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ジャン・ピエール・メルヴィル監督の、さすがといった作品。
深い精神世界を持ったモラン神父。そして気高く意志の強い主人公バルニー。
メルヴィルの深い人間性に心を打たれてしまう。
そしてさらに言いたいのが、アンリ・ドカの撮影スタイルである。無駄をそぎ落とし、清廉ともいえるほど率直なシーン作成には感動させられる。
この映画を通して語られるのは、バルニーの目と口を通しての、モラン神父の高邁で素朴な精神性である。
ぼくもバルニーと同じく、いやそれ以上に色んな矛盾を抱えて生きており、モラン神父の1つ1つの返答には胸を打たれるばかりであった。
メルヴィルはどうしてこんな近づきがたくも魅力的なキャラクターを造形することに成功したのだろうか。おそらくメルヴィルの分身がモラン神父なのだ。
彼の中身にないものは造形できないからだ。だからこそメルヴィル・フィルムには心を惹かれる。なぜここまで素朴なのだろう、なぜここまで異質なのだろう、そして高潔であり、押しつけがましくなく、優雅なのは何故だろう……。
それは永遠の謎であり、メルヴィルのキャラクターを理解するということが、何度もメルヴィル・フィルムを見続ける最大の理由なのだ。
バルニーの恋愛感情の高まりにも言及しなければいけない。これをラブ・ストーリーだと言ってもいいだろう。しかしそれは報われない恋である。
バルニーの素朴さと迷いの多さは、一方の真実でもある。モランの神秘と、バルニーの習慣的感情との対話があるからこそ、この映画の良さが引き立つ。
メルヴィルの作品は優れた精神性がある。だから何度でも見たくなる。
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