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エッセンシャル・キリング (2010)

ESSENTIAL KILLING

監督
イエジー・スコリモフスキ
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3.12 / 評価:86件

解説

前作『アンナと過ごした4日間』で久々に復帰したポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキ監督によるサバイバル・アクション。アフガニスタンでアメリカ兵を殺害し、アメリカ軍に追われるアラブ兵の逃亡劇を83分間セリフなしで撮り上げ、第67回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞と最優秀男優賞を受賞した。飢えと闘い、傷も負った極限状態で大自然の中を逃げ回る主人公を、顔の表情と肉体のみで表現したヴィンセント・ギャロの鬼気迫る演技は必見。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

アフガニスタンの荒野を一人さまよっていたムハンマド(ヴィンセント・ギャロ)は、アメリカ軍に捕らえられる。激しい尋問を受けた後、別の場所へ移送中に事故に遭い、その混乱に乗じて彼は逃げ出す。民間人を殺し、車を奪い、雪に閉ざされた深い森をやみくもに逃げ続けるムハンマドは、やがて森の中に一軒の家を見つける。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

「エッセンシャル・キリング」すべてを脱ぎ捨て、存在の神髄までむき出しにして見せるサバイバルアクション

 監督イエジー・スコリモフスキは「アンナと過ごした4日間」に続く新作もまた、ポーランドにある自宅周辺の森で撮ろうと考えていたという。そんな折、運転を誤り転覆事故を起こした。CIAの秘密収容施設が云々される場所のすぐそばだった。そういうものがあるのなら中東から移送されたテロリストがここで必死の逃亡を繰り広げることもあるだろう――と、“ありそう感”から構想された一作は、政治色も現実感も潔く脱ぎ捨てて、どこでもないどこかへと踏み込んでいく。

 ヘリの俯瞰する白く乾いた大地。それが雪原の白に変わりテロリストらしい男(ビンセント・ギャロ!)のサバイバルがみつめられる。敵兵でも追っ手でもなく飢えと寒さの先にある死こそが男の敵になる。生きるために彼は釣り人の獲物を奪う。まだぴくぴくしている魚を食らう。赤ん坊を抱いた女の乳を横取りする。そうして生きるために彼は殺す。

 鮮血が男の白い服を染める。血しぶきが男の頬にぽつりと赤いシミをつける。もう獣、と見える彼の眼差しが陽に輝く赤い木の実の美を掬(すく)う。主観映像の中でその赤は生存本能だけではない人の徴(しるし)、欠片(かけら)の人性のようなものが男にまだあることを思わせる。人と獣。現実と頭の中の景色。生と死。いくつもの境界を従えつつ呻(うめ)き以外、ひと言も発しない男はやがて宗教画の領域へと迷い込むかにも見える。聖母を思わせる青い衣。それを被ったイスラムの女。聖夜。血の購(あがな)い。真新しい雪が世界を清め、青ざめた馬(=死)がぽつりとそこにいる。光。詩。世界。存在の神髄にまでひん剥く監督の静かな力技に見惚れたい。(川口敦子)

映画.com(外部リンク)

2011年8月3日 更新

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