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ミラル (2010)

MIRAL

監督
ジュリアン・シュナーベル
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3.95 / 評価:44件

イスラエルの地に「夜明け」は訪れるのか。

  • 映画生活25年 さん
  • 2011年8月20日 4時33分
  • 閲覧数 341
  • 役立ち度 12
    • 総合評価
    • ★★★★★

パレスチナ人少女ミラル。
彼女が主人公であるのだが、本作は彼女を育てた女性ヒンドゥの物語から始まる。

1947年。
ユダヤ人によるユダヤ人国家・イスラエル建国前夜。
その地に暮らしていたパレスチナ人は、強引に入植してくるユダヤ人に迫害された。
そんな中ヒンドゥは、親も住む家も失ったパレスチナ人の子供たちに出会う。
そのまま連れて帰るヒンドゥ。
これが彼女の「学校」の始まりである。

ミラルは1978年、7歳の時、母親の死を契機に父親によってこの学校に預けられた。
しっかりした教育を受けさせたいという父親の想いによるものである。

17歳になった彼女は、難民キャンプに教師として派遣された時、イスラエル軍がパレスチナ人の家を破壊するところを目撃し、衝撃を受ける。
イスラエルへの敵意から政治活動に傾倒していく彼女だったが、それはヒンドゥの教えに反することだった。
そして彼女の活動は思わぬ悲劇を招くことになる・・・。

本作は実話に基づいている。
まず感心するのがヒンドゥの功績である。
私財を投げ打ち、さらに資金集めに奔走し、生徒数900人もの大規模な学校を運営した。

本作の根底にある精神はもちろん「平和」なのだが、イスラエルによるパレスチナ人迫害を軸に描いている。
ユダヤ人と言えば、大戦中ナチスに迫害を受けたことを想起するが、大戦後は迫害する側にもなってしまっている。

西暦135年ローマ帝国が古代イスラエルをパレスチナと改称し、ユダヤ人は離散。
19世紀よりユダヤ人による組織的入植が始まり、1948年イスラエル建国。
しかしその地で暮らしていたパレスチナ人は住む場所を追われ、今度はパレスチナ人が難民となる。
1964年PLO(パレスチナ解放機構)結成。
日本赤軍もこれと連携。
アラブ社会がアメリカを目の敵にする割に、日本をさほど敵視していないのは、日本赤軍がアラブ人のために戦ったからだという意見もある。
ちなみに911テロも、一時は日本赤軍がやったというデマが流れ、現地の日本人は喝采を受けた。

幾度もの紛争とテロの応酬。
現在も平和は訪れておらず、パレスチナ暫定自治区のガザ地区とイスラエルの衝突が頻発している。
この点は先月公開された「いのちの子ども」という作品でもよくわかる。

もちろんイスラエル人(ユダヤ人)とパレスチナ人(アラブ人)の全てが敵対しているわけではない。
本作でもミラルの友人(パレスチナ人男性)の恋人はイスラエル人女性である。
ミラルはこの関係に複雑な想いを感じるが、当人同士は当たり前に愛し合う。
その出自や民族、宗教、歴史背景は違えど同じ「人間」なのである。

かつてアパルトヘイト(人種隔離政策)が問題となっていた南アフリカには「夜明け」が訪れた。
このイスラエルの地に「夜明け」が訪れる日はいつのことになるだろうか。

本作はパレスチナ問題、そして平和に考えるきっかけとなる、貴重な秀作である。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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