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ミラル (2010)

MIRAL

監督
ジュリアン・シュナーベル
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3.95 / 評価:44件

戦争という名の暴力に立ち向かった教育の力

  • 絶対の客人 さん
  • 2011年9月13日 17時33分
  • 閲覧数 497
  • 役立ち度 11
    • 総合評価
    • ★★★★★

●歴史 と ○物語

●1947年11月
ヨーロッパのユダヤ人のため、パレスチナを分割し、
新たに国家を建国することを、国連総会が決議する。

●1948年4月
ユダヤ軍事組織がパレスチナ人の村を襲い、
残留するパレスチナ人への見せしめとして約120名を虐殺。
その虐殺で親を殺された多くの子供たちが孤児となる。


○ヒンドゥ・ホセイニ(ヒアム・アッパス)

街で虐殺から逃げてきたという55人の子供たちと出会った彼女は、
『暴力ではなく教育によって、子どもたちに希望を与える』という信念のもと、
<ダール・エティッフル(こどもの家)>と名づけられた学校を設立する。

そんな彼女に理解者である『ジャマール・シャヒン』は、
増え続ける孤児を、彼女の元へ導くことで協力していく。


●1948年5月
ユダヤ人国家、イスラエル建国。

パレスチナの分割に反対するアラブ諸国とイスラエルとの間で第一次中東戦争が勃発。
戦いに勝利したイスラエルは独立国家としての地位を固め、
パレスチナの大部分を支配下に置くと同時に、パレスチナ人の多くが難民となる。

●1967年6月
第三次中東戦争(六日戦争)勃発。この戦争の結果イスラエルは、
パレスチナの東、ヨルダン領の『東エルサレム』と『ヨルダン川西岸地区』
パレスチナの西、エジプト領の『ガザ地区』を占領し、パレスチナ統一。


○ファーティマ

六日戦争によって負傷した兵士が担ぎこまれる病院で看護師をしていたファーティマ。
負傷した兵士が捕虜にされると聞き、彼らをこっそりと逃がしていた彼女は、
それがバレて病院をクビになってしまい、イスラエル人への怒りでテロ組織に参加する。


○ナディア

継父からの性的虐待に耐えかねて家を飛び出したナディアはある日、
ユダヤ人女性とのいさかいがキッカケで懲役6ヶ月の懲罰を受け投獄される。
そこで同房になったファーティマは、他の囚人からテロリストだと噂されていた。

ファーティマのはからいで彼女の兄ジャマールに釈放後の面倒を見てもらうことになったナディアは、
後に彼と結婚し『ミラル』という名の女の子を授かるが、心の傷が癒えないナディアは徐々に精神のバランスを崩してゆく。


○ミラル1

ミラルに母と同じ道を歩ませたくないジャマールは、これまで彼がそうしてきたように、
我が子もまた<ダール・エティッフル>へと預ける決断を下す。このときから、ヒンドゥがミラルの母親代わりとなった。


●1987年12月
イスラエル国防軍のトラックとパレスチナ人の乗るバンが衝突し、パレスチナ人4名が死亡。
これが原因で、パレスチナ人難民キャンプで開かれた犠牲者の葬儀の参列者が暴徒と化し、
警備のイスラエル兵を攻撃、第一次インティファーダ(パレスチナ人による抵抗運動)が発生。


○ミラル2(フリーダ・ピント)

17歳の美しい少女に成長したミラルは、教師として派遣された難民キャンプで目の当たりにした、
パレスチナ人への激しい弾圧行為に憤り、ヒンドゥの反対を無視してインティファーダに参加する。

イスラム教、キリスト教、ユダヤ教
3つの信仰が<共生>する聖地エルサレムを有するパレスチナ人としての誇りと希望を、
ミラルは、ヒンドゥの信念である『暴力ではなく教育によって』見出す日は訪れるのだろうか。


●1993年9月
イスラエルとPLO(パレスチナ解放機構)が『オスロ合意』に調印。
イスラエルはガザ地区、ヨルダン川西岸地区から一時撤退し、5年間にわたるPLOによる暫定自治を認める。

しかし2011年現在、いまだパレスチナにおけるオスロの和平プロセスに光は見えておらず…




ここではあえて時間軸に沿って物語を並べたが、実際映画では過去の回想などを織り交ぜながら、
キャラクターごとに章立てて物語が展開し、決して上記のように規則正しく並べられてはいない。

一つ不満があるとするならば、ナディアの物語とファーティマの物語の境目が徐々に曖昧になり、
さらにナディアの釈放からミラルの物語に移るまで、物語が誰の視点で進行しているのかが曖昧だった点。

しかし、ヒンドゥから始まった物語が時を経て再びヒンドゥの元へ廻ってくる演出は実に見事!
そこから物語はミラルに引き継がれ、暴力ではなく教育の中にこそ光があるということを伝えていく。
素晴らしい!


最後に、ナチス・ドイツに迫害され続け、過酷な運命を背負ったユダヤ人。
そんな映画を多数観てきて、今までユダヤ人に対して同情的な感情を持っていた自分ですが、
パレスチナの歴史を知るにつけ、そんな自分に芽生えるユダヤ人に対する真逆の感情。

また一つ、自分の固定概念を覆す映画に出会ってしまった。映画ってホント素晴らしい!

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 恐怖
  • 勇敢
  • 絶望的
  • 切ない
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