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極道めし (2011)

監督
前田哲
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  • みたログ 483

3.09 / 評価:186件

寂寞のユーモア

  • azr******** さん
  • 2014年10月6日 5時01分
  • 役立ち度 11
    • 総合評価
    • ★★★★★

良作です。

ただ、コメディではなく、辛く悲しい物語です。




それぞれのうまい飯エピソードを通して描かれるのは、
失いたくなかったけど失ってしまった、大切な記憶です。


彼ら囚人に共通する思い出は、「うまい飯」ではありません。

「愛で満たされた飯」です。



この作品を見ながら、我々は思わずにいられないはずです。
俺は思い出さずにはいられませんでした。

本当に最高にうまい飯を食っている時、確か誰かがそばにいたんじゃなかったけ。
あの美しいレストランで一流のシェフが作るコース料理を食べた時、そんなおいしかったっけ。

ああ、あれうまかったなあ。
と今でも思い出すうまい飯の事を思い出した時、何だか涙が出そうになったり。


きっと本当にうまい飯というのは、きっと二度と食べられないものなのです。

それは、その飯には本当に大切な、その人の人生を満たすに足る、愛情の思い出が一緒に添えられているからです。




食べ物というのは、深刻なモチーフです。
恐らく人間が生きる中で、何よりも優先するものが食事です。
大きなことを言えば、世界の争いの全て、経済の全ては、人々の空腹によってもたらされているといって、言い過ぎではありません。
それくらい、食というのは人間に大きな意味を持ちます。

どんな犯罪者でも、偉人でも、老若男女、食わずして生きる事は出来ません。生きているからには、何かを食べているのです。

食べ物とは、一体なんでしょうか。


この作品では、こういう結論を導き出しています。

すなわち食べ物とは、
存在を肯定する暖かい承認であり、愛なのだと。



食べ物を食べられない人がいます。拒食症の方です。
虐待されたり、極度に人にいじめられたりしてなる病気です。

食べ物の好き嫌いが多い子がいます。
統計では、そういう子の親は、育児に対して労力を割かない傾向があるようです。(もちろんアレルギーとかそういうのはのぞいて)

そして、食べ物に良い思い出がないと語る主人公がいます。
彼は天涯孤独の、愛を知らない青年です。


彼らに共通しているのは、愛の枯渇です。



そういう事を考えるとき、この物語のモチーフは、シナリオとしては非常に究極的なのです。


犯罪者が語る、うまい飯。
愛や生を肯定されなかった存在が、愛や人生がなんだったかを語り、思い出し、何かを得る。

これは激情の中で行われる、喪失と獲得の物語なのです。


この作品は、心と腹にギュッと沁みます。

主人公は、最後にどうなったでしょうんかね。


不幸のどん底にずっと浸されたばかりに、
幸せが怖くて逃げてしまうような悲しい人にとって、

幸福はどうやったら得られるんでしょうかね。


俺はいつも、
そいつがうまい飯をニコニコしながら食えていたら、
きっとそいつの人生はもう大丈夫、って思ってます。

やなせさんも言ってましたね。
飯は、完全なる善で、完全なる愛で、生きる事そのものです。


うまい飯ってなんですか?そういう映画です。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 悲しい
  • 切ない
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