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ミケランジェロの暗号 (2010)

MEIN BESTER FEIND/MY BEST ENEMY

監督
ヴォルフガング・ムルンベルガー
  • みたいムービー 189
  • みたログ 641

3.87 / 評価:270件

ラストシーンに込められた絶妙なメッセージ

  • カナボン さん
  • 2011年12月11日 22時03分
  • 閲覧数 1549
  • 役立ち度 21
    • 総合評価
    • ★★★★★

アカデミー外国語映画賞を受賞した「ヒトラーの贋札」のスタッフが再びナチスと命懸けの駆け引きをするユダヤ人の映画を作りました。正直「贋札」の方も観てはいるのですが、あまり印象に残っていません。でもこの作品には正直なところあまりの面白さにビックリ仰天でした。

今日のお題目は「ミケランジェロの暗号」です。

何かタイトルだけ見ると「ダ・ヴィンチ・コード」みたいですが、勿論内容は同じサスペンス系列の映画といっても全然違います。まずシナリオが大変面白くできています。ナチスがイタリアムッソリーニとより強固な同盟関係を維持するために、過去にバチカンから盗まれたミケランジェロの幻の名画を手土産に手に入れようと、現在それを所持する画廊を営む裕福なユダヤ人一家を破滅に陥れた上で強奪する。意気揚々と同盟の席に赴くナチスドイツ。しかしこの絵は真っ赤な贋作だということが露見、面目丸潰れのハイルヒトラー軍、本物探しに右往左往!

ユダヤ人一家の破滅までと相も変わらずのナチスの非道な様子を淡々と描いていく序盤。事の始まりが親友の裏切りというありがちな展開からしても少々退屈な立ち上がりです。しかし手に入れた絵が贋作だということがわかってから、映画は途端にバカみたいに面白くなっていく。

基本的にナチスとユダヤ人の話というものは、ズシンと重いホロコースト物が大半を占めます。勿論本作の背景もナチスによるユダヤ人迫害の一幕であることに違いはないのですが、従来の重苦しさは感じられません。どちらかというと、一人のユダヤ人青年にしてやられるナチスのアホっぷりがクローズアップされてくるため、悲惨さを感じないのです。かといって、「我が教え子、ヒトラー」や「イングロリアス・バスターズ」のような、ハッキリとしたコメディ路線にも持っていっていません。でもナチスのいけ好かない野郎どもがしてやられる為に、とにかく愉快痛快なのです。

ミケランジェロの暗号とは、父親の今際の際の言葉のことなのですが、当然のことながら、これが本物のミケランジェロの名画の在り処を示していることになります。しかしこれは鈍い私でもわかってしまうほど単純、おそらく大抵の方には察しがついてしまうでしょう。でもこの映画にとって、本物の絵画の在り処など二次的なもの、そこに行き着くまでのスリリングな展開がタマラナイのです。

ここまでハラハラドキドキさせてくれた映画は実に久し振りでした。ネタバレしたくないので詳しくは書けませんが、とにかく中盤以降の展開がメチャクチャ楽しい。ああ、やばいっとハラハラしながら、絶妙にナチスのおバカぶりが挿入され、クスクスとしてしまうのです。

あまり馴染みのないオーストリア映画ということで、国際女優のマルト・ケラー以外は殆ど知らない俳優ばかりの作品ですが、出て来る俳優全てがまさに適材適所って感じではまっていますし、確かな演技力もあって安心して観ていられます。特に毎度悪役ご苦労さんのナチスの皆さん、例のハイル・ヒトラーの敬礼そのものがもう殆どギャグとして扱われているのですよね。あるいけ好かない将校など、憎たらしさとアホっぷりの両極面を完璧に使い分けていて感心すらしてしまいます。

決してふざけたコメディとして製作された訳ではないのですよね。尤もそこここに戦争や迫害という行為への強烈なシニカルさは感じ取れますが。でも戦争とはそのものが狂った行為ですよね。当時従事していた者ならいざ知らず、今の時代になってその様子を見ていると本当に人類の歴史はアホな事件が多かったと思わざるを得ません。それが自然と笑いに転化してくる。そのアホさ加減のために、多くの罪のない人々が犠牲になってきたというのも哀しいかな事実。「シンドラーのリスト」のようなホロコーストもので反戦を謳うことも確かに一つの有効なやり方です。しかし本作のような切り口で人類は如何に愚かな歴史を刻んで来たのかという方法もある。

それが最も明白に描かれるのがラストのヴィクトルのあのシーン。あれは袂を分かったルディへの皮肉だけではないのです。この映画を観て来た人たちへの作り手たちからの強烈なメッセージと受け取れるのではないでしょうか。

まさにしてやられました!!

悲惨さを描いてもそれほど重くはない。知的な映画なのだが、決して難しい映画ではない。
まさに映画好きのための映画。お薦めの一本です。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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