ここから本文です

ももへの手紙 (2012)

監督
沖浦啓之
  • みたいムービー 110
  • みたログ 873

3.58 / 評価:538件

解説

『人狼 JIN-ROH』で世界の注目を集めた沖浦啓之監督が、7年の製作期間をかけて完成させた感動の長編アニメーション。父から遺(のこ)された一通の手紙を胸に、瀬戸内海の島へと移り住んだ少女が体験する驚きに満ちた日々を生き生きと描き出す。作画監督に『千と千尋の神隠し』の安藤雅司があたり、作画を『AKIRA』の井上俊之や『猫の恩返し』の井上鋭らが担当する。肉親との離別を体験した主人公の再生のドラマがしみじみと胸に響く。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

父親を亡くしたももは、11歳の夏に母と2人で東京から瀬戸内の小さな島へとやって来る。彼女の手には、「ももへ」とだけ書かれた父からの書きかけの手紙が遺(のこ)されていたが、その真意はついにわからずじまいだった。ももは仲直りできないまま逝ってしまった父親のことで胸がいっぱいで、慣れない場所での新しい生活になかなかなじめずにいた。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2012「ももへの手紙」製作委員会
(C)2012「ももへの手紙」製作委員会

「ももへの手紙」リアルな情景とデフォルメされた表情が融け合う、アニメの到達点

 古きよき日本の風情を残す自然を背景に、愉快な妖怪達との交流を通し、少女の生命力が輝き出す。“となりのトトロ2012”とも言うべき物語を通し、ひとつひとつのビビッドな動きから、作り手の志の高さが伝わってくる。

 心にもない言葉を浴びせてしまった別れが、父との最期だった。伝えられなかった想いを残し、少女ももにのしかかる自責の念。心を閉ざし母との関係はぎくしゃくして、娘宛ての書き出しだけが綴られた父の手紙が、小さな胸を締め付ける。新天地を求める母に連れられ、瀬戸内の島へと引っ越しては来たが、ももは環境の激変に対応しきれない。そんな少女にだけ見えるものの正体が、妖怪の姿を借りる“別の何か”であるという冒頭のタネ明かしは、イマジネーションに拡がりを与える。

 ドラマを作動させるアイコンがある。すべては、天上よりこぼれ落ちる水滴から始まる。通過儀礼としての川への飛び込み。初めて妖怪を目撃する雨宿り。母の危機を救う暴風雨の中の疾走。そして、藁舟流しが届けるもの――。そう、少女の心は「水」にざわめき、溶かされる。それは、海を愛し海で亡くなった父の象徴であろう。

 リアリズムに基づく情景と、デフォルメされた表情。一見、反発し合うかに思える表現手法が絶妙に融合する。リアルとアンリアルの境界線を侵食し合う描写は、日常の裂け目を垣間見る本作にとって、少女の「現実感」に即している。家族の再生を描く沖浦啓之による精緻で丹念なファンタジーは、宮崎駿的なプロットを高畑勲的なアプローチで描き、乗り越えるべく挑んだ、日本独自のアニメーションの到達点である。(清水節)

映画.com(外部リンク)

2012年4月12日 更新

本文はここま>
でです このページの先頭へ