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王様ゲーム (2011)

監督
鶴田法男
  • みたいムービー 28
  • みたログ 142

2.30 / 評価:106件

存在の抹消

  • cyborg_she_loves_me さん
  • 2018年1月11日 1時07分
  • 閲覧数 1698
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

 ☆4つは、映画自体の出来に対する評価というより、私がこれを結構楽しめたということを表わしたものです。
 映画としての出来を見れば、他の方もおっしゃってるように、まあ最低レベルの評価になるでしょうね。ほんっとに演技、下手です。演出も安っぽい、素人くさい。

 私はゲームも小説もコミックも知りません。だから、この「王様ゲーム」という骨格部分が支離滅裂になっていても、原作を破壊しているといって腹が立つことはありませんでした。だから楽しめたんだと思います。
 私が個人的に、色々考えたり想像をめぐらしたりするネタを提供してくれたという意味で、楽しめたのは、この「存在を抹消する」という部分です。この映画での存在の抹消のやり方は、たしかに中途半端だし馬鹿馬鹿しい。うん。しかし、それじゃあ、どういうストーリーにしたら、本当に存在を抹消したことになるだろう。
 それをあれこれ考えながら見てるのが、楽しかった、ということです。

 クラスから数人が消え、荷物も、机や椅子も、名簿の記載も消えたとしても、彼らが座っていた「場所」や、名簿の彼らの出席番号の「欄」は、空白のまま残ります。そのクラスの人たちを除いて世界中の人々から彼らに関する記憶や情報が全部消えたとしても、消えた後の「空白」は確実に存在する。例えば、彼らの家には彼らの勉強部屋が、ひとつも家具のない状態で存在している。
 これを、教師や、家族らが、「変だ」と思わずに生活を続けることは、不可能です。
 それだけじゃない。もし私が例えば陸上部で誰かと毎日タイムを競い合ってたとしたら、もし私が今消滅したら、彼は今日からクラブへ行くたびに、「おれは昨日まで誰と競い合って練習してたんだろう」と疑問に思わずにいられないはずです。もし私が貸してあげた参考書で勉強してる同級生がいたら、もし私と同時にその参考書も消えたら、彼は今日から即座に勉強できなくなって困るはずです。昨日までおれはどうやって勉強してたんだろう、と疑問に思うはずです。
 もし私個人についての記憶が全部消えたとしても、じゃあ私が今の高校に進学するかどうかについて、私の両親が相談した知人の記憶は、消えるのか、消えないのか。その知人が、「こんな相談をされたんだよ」と世間話をした友人たちの記憶は、消えるのか、消えないのか。この両親の知人の友人が、私についての話を聞いて、「そんな子と比べたら、あなたは幸せだよ」と彼の子に言った、その子の生き方は、変わるのか、変わらないのか。

 私と、私の所有物が、消えただけでは、私の「存在」は消えない。べつに私が世界を動かすような大政治家や大科学者とかでなくたって、ごく平凡な一市民だって、よく考えてみたら、じつは私は世界中に存在の爪あとを残しながら生きている。世界をそのままにしておいてこの爪あとだけを消すことは、不可能だ。

 この映画は不出来だからこそ、あちこちで「私だったらどんなストーリーにするかな」とあれこれ想像するのが、楽しかったです。
 そういう楽しみ方は、映画を楽しむひとつのあり方として、あっていいと私は思います。

 だから、☆4つは、これ作った人を、全然褒めてません(笑)。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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