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テルマエ・ロマエ (2012)

監督
武内英樹
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3.57 / 評価:2,533件

僕はコーヒー牛乳派です

  • melrose1004 さん
  • 2012年4月30日 19時36分
  • 閲覧数 1095
  • 役立ち度 98
    • 総合評価
    • ★★★★★

『ベン・ハー』や『スパルタカス』、近年では『グラディエーター』なんかを観るにつけ、豪華絢爛たる古代史ストーリーを映画にできる欧米人が羨ましかったのである。

ところが、どうよ。阿部寛がローマ人をやるって・・・!?
本場チネチッタの素晴らしいセットのおかげもあるが、日本人にだって堂々の古代ローマの物語が作れるじゃないか!
もうそれだけで感動なのである。
しかも、それが風呂の文化比較論だなんて、欧米人なんかには絶対作れやしないだろう!

思えば最近のサッチャーやマリリンだって、完璧に実在の本人にそっくりなわけではない。
なのに、如何にも実在の本人かのように演じさせることは可能なのである。
広場を埋め尽くすローマ人の観衆の中に溶け込む阿部寛の凛々しい姿を欧米人に見せてやりたいくらいである。


果たして実際に「風呂設計技師」なる専門家がいたのかアヤしいところが、この作品の面白さの原点にある。
そんなマユツバな職人が巻き起こすユーモア。
しかし、ユーモアだけならフツーの映画だっただろう。
そこに欧米人にはないペーソスを見事に融合させることで、新たなプロフェッショナリズムに高めえたところに本作の素晴らしさがある。


古代ローマの時代にあって「今の時代の風呂に求められる斬新な発想」に苦悩するルシウスはいつもいつも暗い顔をしている。
せっせと見聞きして導入した自身の新機軸が人々の好評を博し、時の皇帝に高く評価されても、決して笑顔を見せることはない。図に乗らない。
「僕は、ただ単にマネをしているだけじゃないか?」
ローマ人の明るいラテン系のノリ(がホントにあったかどうか知らないが)とは程遠く、自問自答を繰り返す彼のそんな姿は、まるで日本人みたいじゃないか!

この職人気質。これだよ、これ。
プロフェッショナルたるもの、常に自分の手法を批判的に自省する。そこにさらなる向上の糸口が現れる。

他人のアイデアをただ単にパクって我が物顔になっている輩とは違い、そのアイデアを今自身のおかれた状況に適合させて新たなオリジナリティを生み出していく。
ああ、なんて涙ぐましい!
それは、基礎科学の弱さを応用科学で補い、戦後の奇跡的な復興を成し遂げた我々日本人の姿の投影でもあるのだ!(それは言い過ぎか^_^;)

それはそうと、壁にぶつかり打開策を求めるたびに、そのヒントを与えてくれる現代の日本へとタイムスリップする。
それは、まるで彼のたゆまなき向上心を追求するプロフェッショナリズムに報いんとする神の見えざる手による導きのようにも思えてくる。
その仕掛けの巧みさに唸らされてしまうのだ。


確かに、後半のストーリー展開は「転結」をとってつけたような雑な作りだったかも知れない。後半がつまらない、という声も多いようである。

けれど、これで十分じゃないか?
「ケイオニウスなら愚帝で、アントニヌスなら賢帝だ」という構図さえあれば、後はいかようにも補える。
連載マンガとは違い、小ネタの羅列だけじゃ映画としては締まりがないわけで、2時間という短い時間のなかで終わらさなければならないという要請に応えるカタチを整えたというだけのものと理解して足りる。
目くじら立ててストーリーのつまらなさを糾弾するほど、ことの本質が損なわれているとは思えない。それで評価を下げてしまうには惜しい作品である。


タイムスリップした先から戻ってくる時の「共通点」もなかなかハートウォーミング。
実は、ルシウスが劇中で気づくまで、僕も全然気づいていなかった。
その道のプロが挫折しかかったときにめぐりあう感動は、プロとしての矜持を捨てて流す涙の純粋さとあくなき向上心を優先できる寛容さなのである。


「ローマの道はすべてに通ず」とは、ずいぶん傲慢で自己チューな言葉だと思ってきたが、現代と古代、日本とローマがこんなふうに手を携えられるのなら、なんとも心地よく温かいフレーズになるものである。

ゆったり浸かって心を癒す、まさに「お風呂」に象徴されるような作品でした。

詳細評価

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