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瞳は静かに (2009)

ANDRES NO QUIERE DORMIR LA SIESTA

監督
ダニエル・ブスタマンテ
  • みたいムービー 24
  • みたログ 54

3.71 / 評価:21件

子供の視線は時に大人よりもシビア

  • bakeneko さん
  • 2012年1月31日 13時55分
  • 閲覧数 711
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

軍事政権圧政下のアルゼンチンの市民生活をある少年の視点で克明に描いて、“制圧&監視状態にある国家の日常“と“弾圧下でも保持しなければいけないもの”を訴えてくる作品であります。

軍事独裁政権(1976年-1982年)のアルゼンチンにおける監視国家体制下の弾圧は、「オフィシャルストーリー」、「死と乙女」、「スール/その先は……愛」等多くの映画に描かれてきましたが、本作もホルヘ・ラファエル・ビデラ将軍政権下のいわゆる“「汚い戦争」”の反体制派の徹底弾圧下における一般の市民の状況を一人の少年の1977年の一年間を通してシビアに見せてくれます。
反政府活動(=自由民主主義活動)に関与する友達を持っていた母親の事故死で、離婚していた父親&祖母と同居することになった兄弟の弟を中心に描かれる“市民生活”は、特務警察による暴力が日常に存在する不気味さを見せてくれます。
そして、この“いつ火の粉が降りかかってくるか分からない”状況での市井の人々の怯えた生活が、穏やかな会話や遊びの中にも異様な緊張感を感じさせるのであります。
冒頭の大人社会をカリカチュアライズした“秘密警察ごっこ”から、大人社会をシビアに見つめる子供の眼が虚飾の無い世界を映し出す構造で、母親の形見分けの際の親族の浅ましさや、暴行を見て見ぬふりをする“事なかれ主義の処世術”の大人の対応には耳が痛いものが有ります。
また、粛正社会に付き物の“精神主義&健康主義”の象徴である“スポーツ&武道(何と柔道!)奨励”も普遍的な現象として示していて、それに対する“ビー玉遊び”を優先する反抗に、“子供の一分”を訴えて来るのであります。
子供社会や大人達の描写が自然体で良く描かれていて、ちゃっかり屋の友人や親戚の叔父さん&叔母さんの人柄もラテン系らしく陽性さが楽しい描写となっていますが、警察の捜査官の意外な“人当たりの良さ&市民への溶け込みの深さ”が、実際の監視社会を表してリアルな怖さを出しています。そして、たとえ親族と言えども“許せない&妥協できない部分”をシビアに見せる終盤の展開も、“甘さだけでは自分を維持できない社会の厳しさ”を反映していて“苛烈な状況下でも助け合う家族の優しさの勝利”的展開を期待している(平和な社会に漬かった)観客に冷水を浴びせるのであります。
物語と並行して描かれる“アルゼンチンの文化&風俗”も興味深い作品で、特有の食べ物や飲み物、夏の盛りのクリスマスや、白衣の様な小学校の制服、シエスタ(お昼寝)の習慣、学校の授業と子供たちの遊び、そして“疲弊していた経済と建前社会の窮屈さ”が、スペイン映画の様な“赤を中心にした明るい色彩”で活写されますし、謳われる流行歌も親しみやすい曲であります。
俳優は流石に見慣れない役者ばかりでリアルな市民を演じていますが、おばあちゃん役のノルマ・アレアンドロの(若いころは凄い美人だったことが分かる)年を経ても色あせない美しさと、コンラッド・バレンスエラ少年の可愛らしさ(ショタコン垂涎の美貌?)には驚かされます。

“特異な時代&社会”を子供中心に描いた作品ですが、なかなか辛口の着地点に加えて独特の語り口にも、通常の商業映画とは異質な感覚を受ける映画であります。

ねたばれ?
そういえば(最近経済的に疲弊してきた)日本の学校でも愛国心を強要するようになってきたなあ~。

詳細評価

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