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トゥルース 闇の告発

トゥルース 闇の告発

THE WHISTLEBLOWER

111

おおぶね

4.0

オルレアンのうわさと監禁事件と慰安婦

 『オルレアンのうわさ』(みすず書房)という本がある。1969年5月、フランスのオルレアンに流れた女性誘拐の噂だ。社会学者で映画監督でもあったエドガール・モランの本だ。  オルレアンは、パリの南方100kmほどのところにある、当時人口十数万人の地方都市。この街にあるブティックで、女性が消えると言う噂が流れたのは、1969年5月。最初期のうわさは、若い女性がブティックの地下にあるという試着室に入ると、催眠性のある薬品を嗅がされたり薬物を注射されたりして、前後不覚になったところを誘拐され、外国の売春宿に売り飛ばされていく、というものだった。当初は1軒だけだとされていた、女性誘拐を行なっているブティックは、次第に数を増やしていき、最終的には全部で6軒のブティックと靴屋が、この事実無根の風聞の対象とされました。実はこの6軒の店舗うち、5軒までがユダヤ人経営の店であり、残る1軒も、噂の少し前、ユダヤ人の前店主から引きつがれた店だった。  モランはこの噂が、思春期の少女にありがちな、性的なものへの恐れと憧れの中から生まれた物だとしている。最初期の噂は、『神話』化し、社会問題となった後期型の噂と違い、いかにも根も葉もない世間話といった趣の話だった。いろいろと都市伝説にありえる偏見が加わってきた。もちろん、形を変えて、パリのブティックで試着室に入ったら、いきなり地下室に落ちてアラビアに売られるなんて話になっている。  新潟少女監禁事件というのもあった。9年もの間、監禁されていて逃げ出そうとしなかったのである。実際には逃げられなかったのである。ちょうど、この映画に描かれているまんまだ。  従軍慰安婦なんてどこでもある、というのが橋下徹の主張だった。確かにそうで、この映画でも当たり前のように描かれている。他の人もやっているからといって泥棒してはいけない、というのが法律の基本の基本なのだが、弁護士である大阪市長には理解できないことらしい。    で、この映画が噂だったらいいのだが、実話にインスパイアーされたものだという。  『ナイロビの蜂』みたいな事実なのだ。    これ以上は内容に触れるので書かないが、ちょっとだけでも権力を持つと人間は腐るということだ。  慰安婦問題などなかった、という論者も多いが、戦後、日本で最初につくられたのが、国営の慰安婦の施設だった。国営だということで、安心して「就職」した処女も多かったとされる。  匿名の女性が書いた『ベルリン終戦日記』(白水社)がある。  1945年の陥落前後、ある女性ジャーナリストが、窮乏生活や市街の惨状、ソ連軍の蛮行を日記に赤裸々につづっていた。  激しい空襲が続き、陥落間近のころ、女性はアパートの地下室に避難していたが、そこへ赤軍が侵入してくる。彼女はロシア語が多少できたことから、兵士との交渉を買って出る。しかし、隣人たちから見捨てられるように、レイプの被害にあってしまう。それに懲りた女性は、以後は赤軍少佐の「愛人」となることで、身を護ってゆく。ライフラインが途絶え、不安と恐怖がつのる状況下、貴重な食料や情報を得ることができた......しかし、思いがけない結末が待っていた......。  という内容なのだが、200万人のドイツ女性がロシア人にレイプされたとされる。  日本で国営の慰安婦施設をつくった人間たち(確か安倍総理のおじいちゃんも入っていたはず)はこれらの女性たちがレイプの防護壁となったと自慢することであろう。  戦争は人殺し、レイプも人殺しということが常識にならない限り、世界は変らない。  そんな社会に戻そうという勢力があることに気づかないままでいいのだろうか?

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