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009 RE:CYBORG (2012)

監督
神山健治
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3.17 / 評価:644件

絵柄はいいがストーリーが難解

2012年の『009/RE:CYBORG』は、ゼロゼロナイン・リサイボーグと読むのだろうか。REとはやり直すという意味があるが、「サイボーグ009」のリメイク作であること、人類の歴史をリセットしようとする企てが登場すること、劇中で009(島村ジョー)が3年ごとに高校生をやり直していること、そんな意味を込めているのだろう。リサイボーグは過去のヒット作のリサイクルを連想させ、あまり響きのよくない言葉だと思う。

石森章太郎の漫画を、細かい線で現代風に描き直したキャラクター造形は、私にとっては“あり”であった。いちばん変化しているのは、ピノキオのような高い鼻がなくなって普通のイケメンとなった002(ジェット・リンク)だろう。顔が平凡になった分、高速飛行時には全身が“死の天使”を思わせる兵器の姿に変化する。全編を通じて002はほとんど仲間と行動を共にしないが、土壇場で009に力を貸すクライマックスだけは、原作の「ブラックゴースト編」の最後を思わせる見せ場になっていた。

本作は核ミサイルによるテロを事前に止めるのが主な任務になっている。飛翔する兵器を空中で止める能力があるのは009と002しかおらず、その他で必要なのは敵の居場所を察知できる003(フランソワーズ)と、指定した場所にテレポートできる001(イワン・ウィスキー)だけだ。1時間40分ほどの映画で、9人のサイボーグ戦士に等しく見せ場を作るのは大変だと思うが、全員が勢ぞろいするシーンがまったくないのは不満が残った。

紅一点である003は、占拠したイージス艦のコンピューターを操作して核ミサイルのほとんどを撃ち落とす活躍を見せる。サイボーグの記憶を取り戻した009をセクシーな下着姿で出迎え、大胆なラブシーンまでやってしまうのは驚いた。009も彼女のお尻に手を回したりして、二人は以前から濃厚な関係であることが分かる。サイボーグ009でこういう場面をやっていいのかな?ちょっと居心地の悪さを感じてしまった。

いちばんワリを食ってしまったのは008(ピュンマ)だ。本作では考古学者として“天使”のような怪物の化石の発掘に携わり、ストーリーの案内役になるのかと思ったが、何の説明もなく姿を消してしまい、得意の水中活動を生かすシーンもなく・・・気の毒としか言いようがない。
原作ではお笑い担当だった007(グレート・ブリテン)はえらく渋いキャラになっていたが、こちらも前半で姿を消してしまう。彼らがいなくなった理由や、ラストで唐突に戻っている(成層圏で大破した002も戻っている)理由がまったく説明されないため、観ていて投げやりな気分になってしまう。

アクションシーンの迫力はさすがで、加速装置が作動した時の静止した世界が印象的だ。空中で止まっている水滴、005(ジェロニモJr)の拳が繰り出す衝撃波、ゆっくり動くミサイルの炎といった超スローの世界と、現実の超スピードの動きが交互に描かれ、009の能力の凄さを実感できる。原作の漫画でも、009にとっては周りの世界が止まって見える描写があるが、リアルなアニメでやるとこうなるのかという感動があった。

もう一つの迫力場面は「水平移動」の速度感だ。中盤のクライマックスは、空中を飛ぶミサイルの群れに飛び乗りながら撃ち落とす場面だ。この時の009は学生服を着ていて、バビル2世を思わせる。六本木ヒルズの屋上からダイブして空中で003をキャッチするシーン(この場面が必要だったのか微妙だが・・・)、「ゼロ・グラビティ」を思わせる成層圏のクライマックスも印象深い。

ドバイでは009の奮闘むなしく核爆発が起こってしまい、超高速の009は爆発の衝撃波から走って逃げる。絵的には最大の見せ場といえるが、核爆発の場面は、アニメとはいえ気持ちのいいものではない。他のサイボーグ戦士たちがこの悲劇に打ひしがれている様子はなく、009の安否ばかり気にしているのも違和感があった。私的にはドバイの惨劇のダメージが強すぎて、004(アルベルト・ハリンリヒ)、005、006(張々湖)が活躍する戦闘シーンに、あまりインパクトを感じられなかった。

ストーリーはひどく難解で、中盤で004が神様について長々と説明するが、内容がほとんど頭に入らなかった。この場面は未完で終わった原作の「天使編」をベースにしたと思われ、もっと分かりやすくしてほしかった。エンドロールの最後に、月の裏側に巨大な“天使”の化石が見える(星野之宣の「2001夜物語」を思い出した)が、彼らの正体は何だったのか?思わせぶりに登場する白い服の少女が天使の正体なのか?ラストシーンの町は現実の世界なのか?ストーリーの根幹に謎が多すぎ、いくらアクションに迫力があっても満点評価は無理である。

詳細評価

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