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11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち (2011)

監督
若松孝二
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3.06 / 評価:128件

解説

文豪として確固たる地位を築きながら、私兵的団体「楯の会」を結成した三島由紀夫とメンバーの姿を追ったドラマ。「楯の会」と共に陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地に籠城(ろうじょう)した果てに自決を遂げた彼の胸中を、『キャタピラー』『海燕ホテル・ブルー』の若松孝二が迫っていく。『空気人形』『かぞくのくに』の井浦新が、三島の晩年の姿を鬼気迫る演技で体現。『キャタピラー』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した寺島しのぶ、『極道めし』の永岡佑ら、実力派から注目株をそろえたキャスト陣の演技のほか、太く熱く生きていた三島と若者たちの姿に圧倒される。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

「金閣寺」「憂国」などの傑作、話題作を放ち、文豪として世界からも高い評価を得ていた三島由紀夫(井浦新)。学生運動が全盛を極めている中、彼は民族派の若者たちを集めて民兵組織「楯の会」を結成し、有事が起きた場合には自衛隊と共に決起できるようにと訓練を行っていた。しかし、自衛隊には能動的に出動する機会も権利もないことを知り、落胆と不満を抱えていくようになる三島と「楯の会」の若者たち。そして、そのいら立ちは抑えられないところまでに達し、彼らは日本のみならず、世界中をも震撼(しんかん)させる大事件を起こす。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)若松プロダクション
(C)若松プロダクション

「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」三島の美学ではなく、純粋な学生たちの<義>に殉じた精神を描いた実録ドラマ

 愛する家族の死に動物と子供が絡む感動的な実話という、凡庸な作り手の手にかかればいくらでも後ろ向きで湿った、嫌な映画になるかつて若松孝二は<性と暴力>を武器に数多のスキャンダラスな問題作を放ったが、「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」以後、明らかに大きく変貌を遂げた。現代史の闇を抉るような主題を好んで取りあげ、とくに若い世代に向けて、まるで楔(くさび)を打ち込むように苛烈なメッセージで挑発し、鼓舞する映画作りを実践しているからだ。

 三島由紀夫の衝撃的な自決を描いた本作でも、三島の美学的世界には一顧だにせず、彼が死への傾斜を深めていった1960年代という<時代>を、まるで実録もののように、新宿騒乱、金嬉老事件、よど号ハイジャック事件など当時のニュース映像を援用しながら、浮き彫りにしようとする。

 冒頭に現れる浅沼稲次郎を刺殺し、獄中で縊死した山口二矢が影のキーパーソンで、このあまりに滅私な祖国愛に憑かれた若きテロリストの痛々しい魂が全篇を静かに覆っている。三島を自決に導いたかにみえる純粋な民族派の学生たちとの濃密な師弟関係も、彼らの度外れた愛国のロマンティシズム、義侠心の美しさが謳い上げられ、同性愛の匂いが画面から周到に排除されているのは注目すべきだろう。

 既存のイデオロギーに生理的な反発を抱く若松孝二にとっては、恐らく、あさま山荘に立てこもった連合赤軍の戦士も、三島と行動を共にした楯の会の若者たちも等価な存在なのだ。むしろ、彼らの些末なエゴを超えて、<義>に殉じた精神こそ、若松孝二が、自分と対極にある三島の謎めいた生涯のなかで、唯一、深く共鳴したものではないか。

 特に、三島を演じた井浦新、森田必勝を演じた満島真之介の軽佻さが微塵もないひたむきな表情が印象に残った。(高崎俊夫)

映画.com(外部リンク)

2012年6月7日 更新

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