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ジョン・カーター (2012)

JOHN CARTER

監督
アンドリュー・スタントン
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3.24 / 評価:519件

古典SF小説「火星のプリンセス」の映画化

今回取り上げるのは2012年のディズニー映画『ジョン・カーター』。シンデレラ城のオープニングは赤っぽい映像であり、本作が火星を舞台にしていることを暗示している。
監督のアンドリュー・スタントンはピクサーで「バグズ・ライフ」「ファインディング・ニモ」「ウォーリー」を手がけたが、本作が現時点でスタントン監督の唯一の実写映画である。主演のテイラー・キッシュは同時期に「バトルシップ」という大作に出て浅野忠信と共演している。
原作はターザンでもおなじみのエドガー・ライス・バローズが100年前に発表したSF小説「火星のプリンセス」。バローズには「地底世界(ペルシダー)」というシリーズもあり、ウルトラマンに登場する科学特捜隊の地底戦車の名前が「ベルシダー」であったのを思い出す。

僕は小さい頃原作を図書館で借りて読んだことがある。覚えているのは4本の腕がある緑色の火星人と、主人公と恋仲になる人間によく似た火星人(赤色人と言われる)が出てくること。緑色の種族には横暴な独裁者がいるが決闘の末に打倒される、ことなどをうっすらと覚えている。
原作にはたくさんの挿絵が載っており、緑の火星人のビジュアルはほぼ映画の通りであったが、原作のほうが若干太ってマッチョな感じに描かれていたようだ。挿絵といえば、子供向けの本なのにヒロインの衣装がえらくセクシーに描かれていた記憶がある。映画版のデジャー・ソリス(リン・コリンズ)は頑張っていたが記憶に強く残るわけではない。なんと言うか微妙な感じなのだ。

さすがの僕も高度な文明を持った火星人がいないのは知っていたから、読みながら「ちょっと無理がないか?」と思った。ただし火星にはカビかコケのような生物が見つかるのではないかと期待していた。アメリカのバイキング宇宙船が写した火星の赤い大地には、植物の痕跡すらなく自分の夢が否定されたように感じたものだ。現在においても、火星で生物が存在するという明確な証拠が見つかったという話は聞かない。

原作の口絵にカラーイラストが見開きで載っていて、主人公が火星の砂漠でプリンセスに別れを告げる場面で、プリンセスが「私と一緒に行かないのですか?」と訴えていた。映画だとジョン・カーター(テイラー・キッシュ)一行が敵対する緑の火星人軍団に追われ、デジャー・ソリスや緑色人の女性ソラを逃がして単身敵の軍団に挑む場面に当たるだろう。
映画を観て、ずいぶん複雑なストーリーだなと。むかし自分はこんなに難しい話を読んでいたのかと感じた。僕がかつて読んだのは子供向けに読みやすく編集したバージョンだったのかも知れない。映画版のアクションの見せ場は、カーターがターザンの綱渡りのように長距離をジャンプする場面だろうが、「スパイダーマン」でも似た場面があるからさほど新味がないのが惜しかった。

「火星のプリンセス」は現代のSF映画や冒険物に大きな影響を与えたと聞く。この映画版もシリーズ化を想定して製作されたようだが(終末部が「アバター」にそっくり)、今ひとつ大きな人気を得るには至らなかった。公開から5年経った今でも続編が製作されるという話は聞かない。
乾燥した大地を舞台にしたアクション映画なら「マッドマックス・怒りのデスロード」、主人公が異星の民族と交流を持つストーリーなら「アバター」があるが、どちらも熱狂的なファンを獲得している。『ジョン・カーター』もそういった映画に劣らぬほど予算をかけ、迫力の場面が満載の超大作だが、この差はどこから来たのだろう?「映画の神様」に愛された映画とそうでない映画、何かひとつファンの心を掴む要素が足りなかった・・・、僕にはそれくらいの説明しかできない。

僕が好きなのは映画を最後まで観て初めて分かる、謎めいたオープニングである。火星を舞台にした紛争やデジャー・ソリスの結婚話が紹介された後、舞台は19世紀末のニューヨークへ。一人の男(後でカーターであることが分かる)が尾行を気にしながら街を歩いている。ある人物にすぐ来るようにと依頼する電報を打ったあと、名指しされた人物が登場。まだ幼い顔つきのエドガー・ライス・バローズである。本作はバローズがカーターの体験談を書き綴ったという体裁だ。

バローズがカーターの屋敷に到着すると、カーター自身は急死しており、弁護士から墓所と遺品の管理を依頼される。この場面で出てくるカーターの部屋のたたずまいが、東京ディズニーシーのアトラクションなんかによく出てくる「研究室」のそれとそっくりで、この作り込みはさすがディズニーと感心させられた。そして時代はカーターの生前にさかのぼり、火星での冒険に繋がっていく。
オープニングの地球パートで感じた違和感がキチンと回収されるラストはなかなか気持ちがいい。ただし映画ファンの多くを魅了するに至らず、続編も製作されないままというのが何とももったいない。

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