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アーティスト (2011)

THE ARTIST

監督
ミシェル・アザナヴィシウス
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3.92 / 評価:1176件

解説

サイレントからトーキーへと移り変わるころのハリウッドを舞台に、スター俳優の葛藤(かっとう)と愛を美しいモノクロ映像でつづるサイレント映画。フランスのミシェル・アザナヴィシウス監督がメガホンを取り、ヨーロッパのみならずアメリカの映画賞をも席巻。芸術家(アーティスト)であることに誇りをもち、時代の変化の波に乗れずに凋落(ちょうらく)してしまうスターを演じるのは、『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』のジャン・デュジャルダン。ほかに、ジョン・グッドマンなどのハリウッドの名脇役が出演。サイレントの傑作の数々へのオマージュが映画ファンの心をくすぐり、シンプルでロマンチックなラブストーリーも感動を誘う。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

1927年のハリウッドで、サイレント映画のスターとして君臨していたジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、新作の舞台あいさつで新人女優ペピー(ベレニス・ベジョ)と出会う。その後オーディションを経て、ジョージの何げないアドバイスをきっかけにヒロインを務めるほどになったペピーは、トーキー映画のスターへと駆け上がる。一方ジョージは、かたくなにサイレントにこだわっていたが、自身の監督・主演作がヒットせず……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)La Petite Reine ? Studio 37 ? La Classe Am?ricaine ? JD Prod ? France 3 Cin?ma ? Jouror Productions ? uFilm
(C)La Petite Reine ? Studio 37 ? La Classe Am?ricaine ? JD Prod ? France 3 Cin?ma ? Jouror Productions ? uFilm

「アーティスト」見た目はクラシックカーだが新型エンジンを積んだ意欲作だ

 心根のやさしい映画だ。

 そして、若々しい映画だ。

 前者はすぐにわかるが、後者は見逃されがちだ。これが誤解を招く。いい意味でも悪い意味でも誤解される。オスカーを獲ったのは、前者が審査員の心情にアピールしたからだ。一部で首をかしげられたのは、後者の要素に気づいた人が意外に少なかったからだ。

 「アーティスト」は、無声映画の復刻ではない。フランク・ボーゼイジの「第七天国」(ヒロインのペピーが男の上着の袖に腕を通して自分の身体を愛撫する場面はこの映画からの引用だ)、F・W・ムルナウの「サンライズ」、キング・ビダーの「群衆」……すぐれた無声映画を舐めるように検証し、トーキーの古典(「市民ケーン」や「スタア誕生」など)から多くの描写を借りる一方で、技法が相当に大胆なのだ。

 たとえば、すでに周知の事実だが、この映画はカラーフィルムで撮影して黒白にコンバートされている。この手法の採用によって、黒でも白でもないグレーの色調が、陰翳豊かに表現されることになった。

 とくに後半、主人公のジョージ(ジャン・デュジャルダン)は、だぶっとしたグレーの背広を着ることが多い。ここで、微妙な色調が生きてくる。彼の落魄(らくはく)も、説明抜きで観客に伝わる。デュジャルダンの体格がよく、体技をこなせるコメディアンの側面を持っているだけに、味わいはひときわ深くなる。

 だが、映画は暗くならない。下降する主人公が、若い女優や犬や運転手に守られつづけているからだ。この、守護天使の数の多さも尋常ではない。意表を衝く処理だ。大先輩のルビッチやワイルダーが見ても頬をゆるめるのではないか。つまり、監督のアザナビシウスは多くの局面で、「定型を使って定型をうっちゃろう」としている。この試みが私には面白かった。「アーティスト」は、ハイブリッド・エンジンを積んだクラシックカーだと思う。(芝山幹郎)

映画.com(外部リンク)

2012年3月29日 更新

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