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別離 (2011)

JODAEIYE NADER AZ SIMIN/NADER AND SIMIN, A SEPARATION

監督
アスガー・ファルハディ
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4.12 / 評価:448件

解説

イラン人夫婦に訪れる危機を軸に、人間の複雑な心理と共に社会問題をも浮き彫りにし、ベルリン国際映画祭金熊賞などを受賞した人間ドラマ。『彼女が消えた浜辺』のイラン映画界の異才、アスガー・ファルハディがメガホンを取り、濃密ながら壊れやすい家族の関係を繊細に映し出す。娘のために外国への移住を決断する妻をレイラ・ハタミが、父親の介護のためにイランに残りたい夫をペイマン・モアディが好演。波乱含みの様相にさらなる秘密とうそが絡み合い、スリリングに転がっていく展開に心を奪われる。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

イランのテヘランで暮らすシミン(レイラ・ハタミ)とナデル(ペイマン・モアディ)には11歳になる娘がいた。妻シミンは娘の教育のために外国へ移住するつもりだったが、夫ナデルは老いた父のために残ると言う。ある日、ナデルが不在の間に父が意識を失い、介護人のラジエー(サレー・バヤト)を追い出してしまう。その夜、ラジエーが入院し流産したとの知らせが入り……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(c)2009 Asghar Farhadi
(c)2009 Asghar Farhadi

「別離」現代社会の病巣を突く“ヒッチコック・タッチで魅せる「羅生門」”

 ひとつの事実。異なる証言。スリリングな語り口。あるたとえが思い浮かんだ。“ヒッチコック・タッチで魅せる「羅生門」”。そんな惹句ならば、この豊穣な傑作へにじり寄ることが出来るだろうか。アスガー・ファルハディ監督の切れ味鮮やかな演出は、イラン独自の社会問題に向き合いながら、前作「彼女が消えた浜辺」以上に普遍性にあふれ、奥の深い心理劇へぐいぐいと引きずり込む。

 すべては、因習を逃れ自由を切望する女性の願いから始まった。娘の教育のため国外移住を決意した妻と、病床の父を置き去りにはできないと拒む夫。欧米文化に感化された中流家庭の理想と現実がぶつかり合う。妻に家を出られ残された夫は、父のために介護人を雇う。問題はここからだ。介護の女性は、失業した亭主に隠れて働きに出た敬虔なムスリムだった。格差社会を象徴する2つの家庭が交わるとき、倫理や信条の違いから摩擦が生じる。

 生命に関わるトラブルが引き起こされ、裁判沙汰に発展しつつも、映画は真相を伏せて進む。作意なき嘘や秘密によってこんがらがった事態を解きほぐしていくプロセスは、推理小説の手さばきだ。必死に生きるゆえ、他者を傷つけてしまう人々が守り通そうとしたものとは何か。あらゆる人物の身になって諍いを見つめる多様な目線からは、複雑怪奇な業を抱えた人間への愛情がにじみ出す。

 物語の根底にあるのは、閉塞的な現状に抗う精神だ。誰もが我が身に置き換え、自問自答するだろう。社会の病巣を突く視点。心の奥の暗い迷路を照らす脚本。感情の襞(ひだ)を表わす俳優陣の一挙一動。この極上のドラマの余韻は、長く尾を引く。(清水節)

映画.com(外部リンク)

2012年3月29日 更新

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