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ミッドナイト・イン・パリ (2011)

MIDNIGHT IN PARIS

監督
ウディ・アレン
  • みたいムービー 2,580
  • みたログ 4,912

3.80 / 評価:2193件

考えてみると割と複雑な映画だと思う

  • biv***** さん
  • 2020年9月1日 18時56分
  • 閲覧数 1412
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

2010年を生きる主人公が憧れの1920年代のパリへタイムスリップし、そこで出会ったピカソの愛人アドリアナはさらに昔のベルエポック期のパリに憧れ更にタイムスリップ。
しかし、その時代を生きている人から見たら現実は低迷期、みんな自身が憧れる過去の時代を黄金期だと思っている、どの時代でもみんな思うことは一緒「あの頃は良かった」と自分が憧れる過去の時代を勝手に絶頂期だと思い込んでいるだけという話。

あれほど登場した数多くの芸術家達の苦悩もほとんど描かれず、またタイムスリップの原因などが発覚するようなSF展開も特になく、さら~っと話は進んでいく気軽なラブコメディに見えるが、この映画のポイントは主人公と過去の芸術家達との関わり方と、主人公と現代の知り合い達との対比、そしてパリという場所のもつ意味だと思った。

小説の執筆に行き詰まる主人公が自身が憧れる大作家達のいる1920年代のパリへとタイムスリップし、そこでヘミングウェイをはじめとする多くの有名芸術家に出会うが、そこで主人公が求めるのはヘミングウェイ達の話ではなく、自身の小説の評論。
つまり、主人公は過去の憧れの偉人に出会えても大ファンだった彼らの現代では語られていない裏話や実のところを知りたいと思うよりも、今自分が作っている作品へのアドバイスを求めている。

何かを作っている人間が、その道の偉人と出会った時に自分の作品作りの糧にするつもりで関われるのか、それともただのファンとして偉人の話を聞きたいと思ってしまうのかは重要な違いで、主人公は本当の意味で過去の偉人と同じく何かを作る人なのだと思う。
なので、主人公は決して過去のパリで生きて作家になろうとはせず、毎回ちゃんと現代に帰ってきて自身の小説を執筆する。
あくまで主人公は2010年で小説家になろうとしているので、どんなに過去のパリに話の通じる仲間や美人がいても、最後は現代のパリに住むことにしたのだと思う。


そんな主人公を現代で取り巻く人間、というか主人公と同じアメリカ人達の中には誰一人として彼のことを理解してくれる人はいない。
婚約者の両親はお金のことばかり見ているし、婚約者の友人のポールは知識をひけらかすただの知ったかぶり野郎。そんなポールを婚約者は教養人だと言い小説なんか書いてないでもっと社交的になってくれという。
そのくせ小説が売れなかったら成功してる映画の脚本家に専念してほしいと成功=金になるとしか考えていない。

何かじっくりと創作したいと思う人にとっては完全に孤独な環境。


そんな中でもやっぱりパリだけは違う。
現代でもパリジェンヌは古い音楽を愛し、美術館の作品を語ってもただ年号や教科書的な作品の情報を知っているだけでなく、そこから一歩進んだ考えを持っている。
まぁ実際のパリがそうかは分からないけれど、少なくともこの映画では未来志向、発展ばかりを見て昔を美化する懐古主義を馬鹿にするだけでその実全然わかってないアメリカ人と、そのアメリカ人のいう発展=経済的成功について行けない主人公、古い物も大事にするフランス人という図式になっている。

婚約者の友人のポールは懐古主義だと小馬鹿にしてアンティークや昔に憧れることを良しとしないが、このポールがパリの観光で行くところと言えば美術館やベルサイユ宮殿と過去の遺物ばかり。しまいには田舎のレストランでランチなんてノスタルジックも良いとこへ行き出す。
そこで間違った知識をひけらかす。
純粋に美術品を見て自分がどう感じるかなどはこれっぽっちも思わずにただ、作品の時代やモデルの情報を言うだけ。
でも、なんかそれっぽいことを自信満々に言ってるから知識人!教養人!と思ってしまう婚約者と、そんな婚約者の父親もフランスでワインを飲みながら、「ワインはカリフォルニアにかぎるが…」なんて恥ずかしいことを自信満々で話し、母親もまた安物は安物と物の価値=金額としか思っていない。


あぁーそりゃ主人公は嫌気がさすよなぁ。と映画を観ている私達は主人公にのっかるようになる。

が、そこで少し冷静に考えて見るのが個人的には一番面白いと思った。
そんな主人公が過去のパリにタイムスリップして様々な有名芸術家達が登場する展開になると、我々映画の視聴者は、無意識のうちにこのポールの知ったかぶり野郎の感覚で映画を観ていないだろうか?
ヘミングウェイだ!知ってる知ってるアメリカ人だけど一時パリにいたんだよね。
あ、これがダリか、ヒゲもっと特徴的じゃなかった?
あれも有名人っぽいけど誰だろう…。

歴史的な偉人になった人が映画に登場すると、見ている観客は自分が知っている範囲の上っ面の知識で対象を見てしまう。
自分もそういう見方をしていたけれど、よく考えるとそれってこの映画の主人公が辟易していた芸術に理解の無いポールに一番近いのではないかと思った。

詳細評価

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